2013年8月6日火曜日

薬物問題 注目のA・ロッドにもついに処分が

先日ライアン・ブラウンが今季終了までの出場停止処分を受けたことでまたしてもMLB周辺をにぎわせているマイアミ・スキャンダルについて、最も注目されていたアレックス・ロドリゲスに関する処断が決定された。
その内容は211試合の出場停止処分。
つまり来季終了まで試合に出られないということだ。
38歳の彼にとってこれは事実上の引退勧告にも近いが、永久追放されなかっただけまだマシととらえるべきか。
この処分は8日から実施される予定だがA・ロッドは異議申し立てをする心づもりのよう。
それが通るはずもないのだが、その期間中は試合出場が認められるためボロボロのヤンキースとしてはいないよりマシといった感じかもしれない。
今日の試合で今季初出場し、ブーイングの中初ヒット。
これだけの騒動になっておきながら異議まで申し立てるあたりなんともA・ロッドらしいというべきか。
彼が全米一のヒールになってからA・ロッドファンになった私としてはこの一連の動きは中々面白く感じているが、流石に永久追放にはならないで欲しいものだ。
引退するのか、処分を受け入れて2015年の復帰を目指すのか。
どちらを選ぶのか彼の今後の動向にも注目していきたい。

また他にも処分が下った選手が12人いる。
ネルソン・クルーズ(レンジャーズ)
ジョニー・ペラルタ(タイガース)
エバース・カブレラ(パドレス)
ファウティノ・デロスサントス(パドレス)
フランシスコ・セルベリ(ヤンキース)
フェルナンド・マルチネス(ヤンキース)
アントニオ・バスタード(フィリーズ)
ヘスス・モンテロ(マリナーズ)
セルジオ・エスカローナ(アストロズ)
ジョーダン・バルデスピン(メッツ)
シーザー・プエロ(メッツ)
ジョーダン・ノルベルト(FA)
彼らは初めてなので規定通りの50試合出場停止処分になるが、中にはチームにとって彼らを欠くことが大損害となるチームもある。
特に優勝争いをしているレンジャーズとタイガースは痛手だ。
クルーズはここまで27本塁打 OPS.841の活躍で、グレードが落ちたレンジャーズ打線の柱になっていたのだが、これで長距離砲が一つ失われたことになり、得点力低下は必至だ。
タイガースの方は、ピーヴィが絡んだ先日の三角トレードでレッドソックスから好守のイグレシアスを獲得しており、一応穴埋め要員は揃っている。
ペラルタの得点力は失われるが、代わりに極上の守備が手に入るためそこまで大きな痛手にはならないだろう。
またチームは下位だがパドレスのカブレラは37盗塁で目下盗塁王だったのだが、この処分によってその栄誉を獲得することができなくなった。
マイアミ・スキャンダルの影響は果たしてどこまで出てくるのだろうか。

2013年8月5日月曜日

あまりにもハイレベル!ナ・リーグのルーキースターター

日本ではライアン小川、藤浪、菅野といった新人先発投手たちが活躍しリーグを湧かせている。
MLB、特にナ・リーグではある意味それ以上に新人投手が席捲している。
それに伴い新人王争いも激化。
近年稀にみるハイレベルなレースとなっている。

シェルビー・ミラー(22)
11勝7敗 防御率2.89 121.1回 132奪三振 35四球 12被本塁打 WHIP1.13
開幕ローテーション入りすると何度も好投し、前半戦の新人王を決めるならば彼で間違いないだろう。
年齢にしては完成度が高く、速球派の奪三振タイプでありながら制球も悪くない。
しかし初のメジャーフルシーズンということもあってかやや疲労がたまっている様子で最近は序盤ほどの圧倒的パフォーマンスを披露できないでいる。
彼を評価する上でネックになるのは投球回の制限があるため7回以上投げたケースが3度しかないことと、6回もたずに降板するケースが11度あったためQS率が低いということだ。
数字自体は優秀だがこういう点で評価が分かれるため今や絶対的な新人王候補ではなくなった。
また、4シーム、カーブ、チェンジアップという球種の少なさ、しかも9割以上を4シームとカーブで占めているため研究されやすく、ここからさらにパフォーマンスが向上するという可能性が考えられにくい。
チームもプレーオフはほぼ確実なため無理をさせることはないだろう。

フリオ・テヘラン(22)
8勝5敗 防御率3.02 131.0回 117奪三振 28四球 15被本塁打 WHIP1.18 
ペドロ二世と言われながらここ2年結果を残せずにいたが、今季スプリングトレーニングで素晴らしいパフォーマンスをみせローテーション入り。
開幕直後は苦しんだのだがやはりその実力は本物で5月以降はエース級の活躍でチームを牽引している。
三振も奪えるようになってきており、二桁三振を3度記録。
しかし最も特筆すべきは制球力の高さで、今季は3四球したのすら3試合しかないという安定ぶり。
調子のいいときは球数を少なく長いイニングを投げることもでき、かなり完成度が高い。
彼はシーズンを追うごとに調子を上げており、怒涛の追い上げでミラーとの座が逆転する日もそう遠くないかもしれない。
ただこちらもプレーオフはほぼ確実なためチームが無理をさせることはないだろう。

ヒュンジン・リュ(26)
10勝3敗 防御率3.15 134.1回 111奪三振 42四球 11被本塁打 WHIP1.27
韓国からのポスティング入団だったが一年目にして見事メジャーに適応してみせた。
開幕からローテーション入りし、チームが不調だったときもカーショウとリュの二人だけは安定していた。
今季のドジャースのキーパーソンの一人だったと言ってもいいだろう。
何か飛びぬけた能力があるわけではないがほとんど全てが高水準で 毎回ある程度試合をまとめてくれる優秀な三番手という活躍をしており、おそらくイニング制限もされないため他の新人投手に比べて投球回という点では一番有利。
特筆すべき点がないため、仕事量で勝負したいところだ。
7月はあまり調子が良くなかったためここからが踏ん張りどころ。

ホゼ・フェルナンデス(21)
8勝5敗 防御率2.54 127.2回 138奪三振 43四球 8被本塁打 WHIP1.01
上記3投手と違い彼の所属するマーリンズは再建期の最下位候補。
しかしだからこそフェルナンデスの存在はファンのよりどころとなっている。
開幕すると20歳にして飛び級メジャー昇格で周りを驚かせたキューバ人投手は、今季ここまで間違いなくエースと呼べる投球をしており、新人投手の中では一番のできだ。
しかもおそろしいことにここに来てさらにギアを上げ、7月28日のコールとの投げ合いでキャリアハイの13奪三振を記録すると、その次の登板で14奪三振を記録しまたキャリアレコードを更新してしまった。
とにかく打たれず長打も許さず、三振も多く奪う。
それでいて制球も悪くないのだからこの若者はもはや手のつけようがない。
このままいけば間違いなく彼が新人王になると考えていいのだが、チームは彼に球数制限をかける方針。
それもそのはず彼はまだプロ入りしてフルシーズンとしてはこれが2年目なのだ。
今後十数年にわたってMLBの頂点に君臨することを期待され、バーランダーやクレメンスとも比較される逸材は、今季新人王を受賞できなくてもこれから色んな賞を獲得するに違いない。

ゲリット・コール(22)
5勝5敗 防御率3.69 61.0回 43奪三振 14四球 5被本塁打 WHIP1.11
パイレーツファンは笑いがとまらないに違いない。
これまで下位をうろつくばかりだったチームは優勝争いを繰り広げ、その軸となるローテーションの中にはこんな怪物がいるのだ。
コールの存在は20年耐え続けたパイレーツファンへのご褒美のようなもの。
彼は既に球速という点においてはMLB最高レベルに達しており、この10試合で彼が大崩れした試合は一つもない。
奪三振がやや物足りないが最近は増加傾向にあるし制球力も非常にいい。
今後彼がバーランダーのようにパワーピッチャーの代名詞として語られるようになる日はそう遠くないだろう。
そして何度もサイ・ヤング賞争いに顔を出すようになるに違いない。

トニー・シングラニ(24)
5勝1敗 防御率3.05 82.2回 97奪三振 35四球 10被本塁打 WHIP1.11
今後左の奪三振マシーンとして名を上げていくであろう存在、それがシングラニだ。
先発にして8割強の割合で速球を投げ込んでくるゴリ押しタイプだが、打者は不思議とそれにバットを当てることができない。
他の好投手に隠れて知名度は低いが今後がかなり気になる投手だ。

ザック・ウィーラー(23)
4勝2敗 防御率3.73 50.2回 41奪三振 28四球 8被本塁打 WHIP1.40
ウィーラーはメッツのエースになることを期待されている。
今やハービーがその座についているわけだが、ウィーラーも彼と同等のポテンシャルを秘めているのだ。
まだまだ荒削りではあるが、これである程度の結果を出せている点は大器の片鱗と言うべきか。
かなり線が細く、体格的にもっと鍛え上げれば洗練されてくるはずだ。



2013年8月4日日曜日

ドジャースは独走モードに入ったのか?チームを支えるエースとクローザーの存在

7月に入って以降好調を維持し続け、首位も奪い返したドジャースはトレード・デッドラインをすぎ8月に入った今もその調子が落ちる気配がない。
7月の勝率は19勝6敗 .760であり、8月も現在無敗の3連勝中。
特にオールスター明け以降では13勝2敗ともはや敵なしの状態だ。
同時にライバルのダイヤモンドバックスが最近あまりうまくいっていないことで独走状態になりつつある。
この15試合で4失点以上したのはわずか4試合という前評判通りの強力投手陣がその鍵となっているのだが、特に際立つのが最強のエースであるカーショウの存在だ。
10勝6敗という物足りない勝敗とはうらはらに防御率1.87 168.1回 WHIP0.86と内容はレジュエンド級。
しかも7月に入ってからの6登板で四球はわずか2つと抜群すぎる安定感を見せている。
これまで彼の投球内容で難癖をつける点があるとすれば制球だけだったのが、今ではMLB最強の制球力にまで成長しつつある。
当然ながら今季のサイ・ヤング賞最有力候補であり、しかも防御率1点台でシーズンを終えることになればMLBでは2005年のクレメンス以来の快挙となる。
そんなカーショウの武器は4シーム、スライダー、カーブ、チェンジアップの4つ。
4シームは平均93mph前後とMLBの水準で考えると飛び抜けて速いわけではないのだが、その威力はMLBの先発投手の中では最高クラス。
そうしてもう一つ重要な武器が縦に大きくわれるスローカーブ。
4シームとスローカーブのコンビネーションはダルビッシュもよく使うパターンだがMLBの速球投手はカーブも速いためそれほど多く見られるわけではない。
カーショウもこのカーブが4シームをより際立たせている。
しかし彼の場合はただカーブをただ4シームの引き立て役として使っているわけではなく、三振を奪う際の最強のウィニングショットとして使っているのだ。
彼のカーブの割合はわずか12%前後だが、三振をとりたい重要な場面では必ずと言っていいほど投げ込んでくる球種。
今季のその被打率はわずか.069であり、どれだけ打たれない球種なのかがよくわかる。
加えてもう一つカーショウのカーブについてもう一つ非常に興味深いデータがある。
それはこれまでのキャリアで2018球を投げ込んできたこのボールが本塁打されたことが一度もないということ。
もちろんこれは他の球種とのコンビネーションもあっての結果なのだが、これがどれだけ驚異的なことなのかは誰でもわかるだろう。
このカーブがいつ初本塁打されるのか、あるいはされないのかは今後も注目していきたい。

され、これまでカーショウの話をしたが、現代の野球で重要なのはもちろんエースの存在だけではない。
高校野球とは違い長いシーズンを戦うプロではリリーフの存在も重要なのだ。
その中でも最も重要なのはクローザーであることは言うまでもないだろう。
もちろん好調ドジャースにはそれにふさわしい好調のクローザーが存在する。
それは25歳のオランダ人投手ケンリー・ジャンセンだ。
ジャンセンは昨季クローザーとして定着したが、チームがブランドン・リーグを獲得したことでクローザーは彼のものに。
そして今季もクローザーはリーグ、ジャンセンはセットアッパーという役割になっていた。
しかしリーグは今季序盤から不調。
チームは我慢して使い続けたが調子は上がらず、クローザーから降格となった。
そして出番がまわってきたのがその間も好投していたジャンセンだった。
彼はリベラを彷彿とさせるカットボール使いであり、実に90%近い割合でカッターを投げ込む。
もちろんその威力も抜群で、多くの三振もとることができる。
メジャーに定着して間もなかった2011年頃までは、元捕手であり投手としての経験が浅いせいか制球には不安があったのだが昨季はそれがある程度改善され、今季はまるでリベラのような制球力をみせるまでに至っている。
今後もまだ伸びしろがあり、これから数年、あるいは十数年にわたって彼がドジャースのクローザーとして君臨するかもしれない。
ネクスト・リベラの時代がこれから始まるのだ。


2013年8月2日金曜日

絶好調の黒田にサイ・ヤング賞の芽はあるのか?

素晴らしい成績を残す日本人先発投手たちだが、その中でも今際立って活躍しているのが黒田博樹だ。
親友カーショウとのエース対決で素晴らしい投げ合いを見せた黒田は今最もホットな先発投手になっている。
そんな黒田の武器は抜群の安定感だが、これほどまでの投球を見せてくれるとやはり気になるのはサイ・ヤング賞をとれるのかどうかということ。
彼が今季最高投手の栄誉を受ける可能性を考えてみよう。

まず主要スタッツは以下の通り。

10勝6敗 (リーグ10位)
防御率2.38 (リーグ2位)
139.2回 (リーグ13位)
99奪三振 (リーグ28位)
奪三振率6.38 (リーグ35位)
四球率1.74 (リーグ5位)
K/BB3.67 (リーグ10位)
被本塁打率0.77 (リーグ11位)
被打率.226 (リーグ7位)
WHIP1.03 (リーグ4位)
QS率0.68 (リーグ11位)
FIP3.38 (リーグ12位)
xFIP3.61 (リーグ16位)

各スタッツ素晴らしいが、惜しいのはやはり奪三振に関する項目。
また黒田にとってネックなのは数字上リーグ最高と言える部分がない点だ。
どれをとってもそれを上回る存在がおり、それでも全てにおいてリーグ3本の指に入るレベルならばいいのだが、そうではない部分がやはりいくつかある。

また今季のサイ・ヤング賞最有力候補となっているフェリックス・ヘルナンデスの存在も黒田の受賞可能性を大きく引き下げている。
ヘルナンデスは全てにおいてリーグトップクラスと言える数字を残しており、いつもネックになる勝敗に関しても今季は負けが少なく優秀な数字だ。
はっきり言ってしまえばほぼ全てにおいて黒田を上回っている投手であり(実際ヘルナンデスが黒田を下回っているスタッツはWHIPと被打率くらいしかない)、黒田が今の調子を維持し続けてもヘルナンデスが調子を急落させない限りはこの牙城を崩すことは非常に難しい。
それくらい今季のヘルナンデスは絶対的な存在なのだ。

その対抗馬となれそうな投手がいるとしたらマックス・シャーザー。
開幕から13連勝で話題になったがついに土がついてしまったことでやはりサイ・ヤング賞はヘルナンデスのものかという雰囲気になってきている。
実際最近のサイ・ヤング賞投票は内容重視の傾向にあり、勝敗というのはそこまで気にされるものではなくなってきた。
しかしシャーザーに関してはただ勝ち運がある投手というわけではなく、しっかりと内容も伴っている。
特にセイバー的観点から見ればヘルナンデスと同等かそれ以上の内容と考えることもできるのだ。
そこに15勝1敗(今後もっとよくなる可能性も十分にある)という数字がついてくる以上、彼はヘルナンデスの対抗馬として不足はないはずだ。
1敗しているとは言えこの勝率は決して無視できず、最近の試合でも極めて安定している彼が防御率2点台中盤あたりにまで数字を向上させることができれば、一転彼が最有力になることも有り得る。
ただ彼にとって不運なのは、本来独走になることもありえた奪三振レースにおいてダルビッシュという強力すぎるライバルがいることか。
ダルビッシュに奪三振のタイトルを持っていかれると、最多勝との二冠を達成できなくなり、ヘルナンデスが防御率のタイトルを獲得した場合印象として弱くなってしまう。
シャーザーがサイ・ヤングをとれるかどうかは防御率2点台中盤にもっていけるか、奪三振のタイトル争いに競り勝てるか、という2点にかかってくるだろう。

いずれにしても今回のテーマである黒田のサイ・ヤング賞の可能性は低いと言わざるをえない。
やはり強力すぎるライバルの存在は大きいのだ。