2013年9月26日木曜日

日本人初のサイ・ヤング投手は出るか?

今季は日本人投手の活躍が目覚しい。
ダルビッシュ、岩隈、黒田の三人のエース級先発投手に加えてリーグ最高のリリーフと言ってもいい活躍をみせる上原、そして最近では一度はどん底まで落ちた松坂もにわかに復活の気配を匂わせている。
これまでも、日本人メジャーリーガーは投手ではそれなりに活躍した選手が数多くいた。
パイオニアとして名高い野茂はタイトルや両リーグでのノーノーなど非常にインパクトある活躍をしたし、さらにそれ以上に安定感ある活躍を長期続けて先発2番手クラスの地位を確保した黒田もいる。
リリーフではなんといっても斉藤隆の活躍は素晴らしく、数年間リーグ有数のリリーフあるいはクローザーとして名を上げた。
しかしその一方で、日本人投手がサイ・ヤング賞というMLBの投手最高の栄誉に輝いたことはまだない。
1995,6年の野茂、2008年の松坂がそれぞれ投票で4位につけたのが過去の日本人投手の最高点だ。
日本は投手力の国だということを証明するためにも是非とも一度はサイ・ヤング賞投手を輩出しておきたいところだが、今季はその可能性に最も近づいているのだ。

上述の3先発はそれぞれ中盤までエース級の活躍をしていたのだが、流石に高齢の黒田がここにきて調子を落としはじめ、サイ・ヤングレースからは脱落してしまった。
可能性がある日本人投手は岩隈、ダルビッシュ、上原の3人。
しかし上原はただでさえハードルが高いリリーフである上にクローザーとして定着したのが遅かったためにセーブ数という分かりやすい数字に欠けていることから、レッドソックス地区優勝の立役者である点を考えても投票に顔を出す程度で上位に入ることは難しいはずだ。
そうなると受賞の可能性が出てくるのは岩隈とダルビッシュの2人だけになる。

岩隈久志
33先発(リーグ1位)
14勝6敗(同7位)
防御率2.66(同3位)
219.2回(同2位)
被打率.220(同3位)
奪三振185(同9位)
WHIP1.01(同2位)

ダルビッシュ有
31先発(リーグ19位)
13勝9敗(同14位)
防御率2.82(同4位)
204.0回(同14位)
被打率.193(同1位)
奪三振269(同1位)
WHIP1.07(同4位)

二人の残している数字を簡単に比較してみるとこうなるがダルビッシュに関してはもう1度登板機会があるかもしれない。
それでは最大のライバルとなるはずのシャーザーのスタッツも見てみよう。

マックス・シャーザー
32先発(リーグ5位)
21勝3敗(同1位)
防御率2.90(同5位)
214.1回(同4位)
被打率.198(同2位)
奪三振240(同2位)
WHIP0.97(同1位)

こうしてみると、ダルビッシュはシャーザーとタイプが似ている上に勝敗に大差をつけられているため上位互換の感が出てしまい、両者を比較するとどうしてもダルビッシュが一段落ちてしまう。
特にダルビッシュは9月に入ってからのチームの大事な時期に四球乱発や打線の援護のなさもあって5試合で1勝しかできなかった点はイメージが悪い。
となるとシャーザーと岩隈ではどうなるのか。
14勝と21勝のサイ・ヤング賞対決というとMLBファンなら2010年サイ・ヤング賞を思い出すはずだ。
わずか13勝で下位チームのエースだったヘルナンデスが21勝でポストシーズン進出チームのエースであるサバシアを上回った事件はMLB界にとって変革的な出来事だった。
日本人ならこの似たようなシチュエーションから2010年の再現で岩隈がサイ・ヤングの栄冠に輝くことに期待するファンも多いかもしれない。
だが2010年は勝敗以外はヘルナンデスがほとんどすべての点でサバシアを上回っていたからこその出来事であり、とりわけ防御率には1点近い大きな差があった。
しかし今回のケースではシャーザーが岩隈を上回っているスタッツも多く、勝敗で派手に差があいているのに対して岩隈がシャーザーに大差をつけているスタッツがない。
近年勝敗を投手の実力そのものとすることをよしとしない気風が広まってきているが、それでも勝ちを争うスポーツである以上チームの勝利に貢献したという直接的な数字である勝敗を軽視するわけにはいかない。
他の数字で明らかに実力の差が示されているのならともかくk、今回は勝敗のアドバンテージがシャーザーに味方することになるはずだ。
だがそれでも岩隈は日本人で初めてMLBで防御率2点台、200投球回を達成した投手であり(ダルビッシュも同時に達成しそうだが)、受賞ならずとも投票で3位以内に入る可能性は極めて高い。
偉大な日本人メジャーリーガーの仲間入りを果たしたことは間違いないのだ。

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