2013年6月30日日曜日

これぞ野球の魅力! MLBの速球自慢たち

速いボールを投げる投手というのはいつの時代も魅力的だ。
日本でルーキーの大谷があれだけ騒がれているのも、常時150km前後、最速160kmのボールを投げられるからというのが一つの要因になっていることは間違いない。
MLBにおいても速球派投手がファンに好まれるのは変わりない。
違うのはそのスケールの大きさだ。
MLBで速球投手と呼ばれるには先発なら常時93mph(約150km)、リリーフなら常時95mph(約153km)は超える必要がある。
もちろん最速100mph(約161km)を超えているなら文句なしだ。
今回紹介するのはそんな速球自慢が集まるMLBでもずば抜けた豪腕たちだ。

”リリーフ”

アロルディス・チャプマン
2013年速球平均球速97.5mph(約157km)  最速105.1mph(約169km)
日本人の野球ファンでも彼の名前を知っている人は多いはず。
2009年のWBCでキューバ代表として出場し話題になり、その後MLBで最速記録を出した人類最速投手だ。
しかも左投手というおまけ付きで、2012年に大ブレイクしMLBでも有数のクローザーへと成長した。
軽々と100mphを投げ込むさまは圧巻としか言い様がない。


ケルビン・ヘレーラ
2013年速球平均球速97.1mph(約156km) 最速102.8mph(約166km)
メジャーデビューは2011年と浅いため、あまり知られていないかもしれないがチャプマンに次いで速い投手がヘレーラだ。
実はドミニカ代表として2013年WBCに出場しており、その影響があったのか今季は制球難で不振に陥っている。


トレバー・ロゼンタール
2013年速球平均球速96.3mph(約155km) 最速101.4mph(約163km)
デビューしたのが昨季後半で今季がルーキーイヤーとなっているが、おそらくそう遠くないうちに彼の名は全米に知れ渡るはずだ。
おそろしいのがこれだけの速球を投げながら23歳という若さで高い制球力も持ち合わせている点だ。
今後もしかしたら先発に転向する可能性もあるが、リリーフ向きの投手だけにこのまま一流のクローザーを目指してもらいたいところだ。


クレイグ・キンブレル
2013年速球平均球速96.4mph(約155km) 最速100.0mph(約161km)
もはや言わずと知れた現在最高のクローザー。
彼の速球はMLBで最も強力なウィニングショットの一つだ。


ネイト・ジョーンズ
2013年速球平均球速96.3mph(約155km) 最速101.1mph(約163km)
この中では最も知名度の低い投手だろう。
しかし特徴的なショートアームから繰り出される剛球は必見。
27歳でメジャー2年目と遅咲きだったがここからのし上がっていくことに期待したい。


”スターター”

スティーブン・ストラスバーグ
2013年速球平均球速95.4mph(約154km) 最速100.4mph(約162km)
彼もおそらく日本でも知名度が高いはずだ。
ドラフト史上最高の投手と言われ、14奪三振の衝撃デビューを果たしてから3年が経ったが、怪我を乗り越えて彼はMLB最高の投手の一人になろうとしている。
なによりも恐ろしく、スカウトをも唸らせたのはその制球力の高さであり、ただ速いだけのノーコン投手では全くない。
これはつまり球速が低下するであろう晩年にも活躍できる可能性が高いということだ。
怖いのは怪我だけだ。


マット・ハーベイ
2013年速球平均球速95.2mph(約154km) 最速100.1mph(約161km)
今季のナ・リーグサイ・ヤング賞最有力投手。
デビューした昨季の時点で既にエースの風格を漂わせていたが、今季は制球力が大幅に向上し今の好成績につながっている。
ストラスバーグとともに今最も完成度の高い24歳だ。


ホセ・フェルナンデス
2013年速球平均球速94.7mph(約152km) 最速98.9mph(約159km)
低迷するマイアミのファンの楽しみは二つあるはずだ。
一つはスタントンのホームラン、もう一つはフェルナンデスのピッチングだ。
キューバ出身の彼はバーランダーやクレメンスとも比較される逸材であり、なにより他の投手とはものが違うと評されているのがその精神力。
亡命時に過酷な経験を何度もしており、20歳らしからぬ精神力を持ち合わせている。
現時点でもほとんどの欠点がないと言っていいだろう。
若いデビューとなったため、このまま順調にいけば殿堂入り級の投手に成長してくれるかもしれない。


ジャスティン・バーランダー
2013年速球平均球速93.6mph(約151km) 最速101.7mph(約164km)
速球自慢となると彼の名を挙げないわけにはいかない。
実は今季平均球速が1mph程落ちてしまい、おそらくそれが成績悪化の一因にもなっているのだろうが、9回でも100mphを投げ込める(今季はまだないが)無尽蔵のスタミナは剛球はMLB屈指のものだ。

2013年6月29日土曜日

弱小チームの希望の星

ここ数年下位に甘んじ、上位争いを演じることもなかった弱小チーム、シアトル・マリナーズ、ヒューストン・アストロズ、シカゴ・カブス、ニューヨーク・メッツ。
しかしそんなチームにも期待できる選手はおり、弱小期間をうまく使えば今のナショナルズ、オリオールズ、パイレーツのように上位争いできるレベルにまで成り上がることができる。
今回はそんな弱小チームの将来を背負う期待の若手選手たちを紹介しよう。


”シアトル・マリナーズ”

マイク・ズニーノ(22)
モンテロの不振もあって6月12日に予想よりも早い昇格を果たした。
初本塁打は放ったもののまだまだ活躍しているとは言い難い。
しかしマリナーズに欠けていたチームリーダーになれるポテンシャルがあり、いつしかポージーのような捕手になることを期待されている。

 ニック・フランクリン(22)
ショートでリーグ有数のプロスペクトという評価を得ていたが、今季打撃が開眼しメジャーデビューを果たした。
セカンドのアックリーを外野に追いやる活躍で、今季最も活躍しているマリナーズの若手だ。
2010年にはマイナーで23本塁打するなどパワーもなかなかある。

ダニー・ハルツェン(23)
プロ1年目の昨季はAAA昇格後制球難に陥り心配されたが、それはどうやら杞憂に終わりそうだ。
今季はAAAで文句なしの活躍を見せており、メジャー昇格も近いだろう。
フェリックス、岩隈に次ぐ3番手として定着すればチームも面白い存在になってくる。

タイワン・ウォーカー(20)
マリナーズ最高のプロスペクトにして将来のエース。
フェリックスと同等の投手になることを期待されており、今季はAAで好成績を残してAAAに昇格。
制球などまだ課題はあるが、来季あたりには昇格できるかもしれない。


”ヒューストン・アストロズ”

ジョーダン・ライルズ(22)
元々チーム最高のプロスペクトだったがメジャーデビュー後にやや伸び悩んだ。
今季はブレイクの兆しを見せており、待望のエースになれるか。

ジョージ・スプリンガー(23)
走攻守揃った外野手で、今季はAAで19本塁打を放つ活躍を見せた。
AAAにも昇格し、うまくいけば9月頃のメジャーデビューをありえるかもしれない。

カルロス・コレア(18)
昨年プエルトリカンとして史上初の全体1位指名を受けたが、順調に成長しており今季はAで格の違いを見せつけている。
最近やや人材不足のショートに期待できる大型ショートストップが現れたわけだ。
メジャデビューはまだ先になるが、アストロズは戦力が揃う数年後コレアを筆頭にかなりの強豪になっているかもしれない。

ランス・マッカラーズ(19)
こちらもAで好成績を残しており、特にアストロズとしては念願の速球派投手だ。
威力抜群の速球で三振の山を築くことができ、数年後には1,2番手になることを期待されている。

ジャレッド・コザート(23)
こちらも速球派投手で、AAAで好成績を残しているためメジャー昇格も近いだろう。
先発で結果を残しているがリリーフ向きの投手で、オールスター明け頃までにデビューさせて今季中にクローザーに据えるというのがチームとしては理想の形だろう。
今年全体1位指名したアペルとマッカラーズ、ライルズを中心としたローテーションにクローザーはコザーートという形が数年後に揃えば理想的だ。


”シカゴ・カブス”

ハビアー・バイエズ(20)
昇格にはまだ時間がかかりそうだが、スターとしての可能性を秘めたショートストップで、特にパワーに関する将来性は高く評価されてる。
今季もA+ではすでに16本塁打しており、順調に成長している。
WBCの練習試合で日本代表から本塁打も放っており、記憶にあるファンもいるのではないだろうか。

アルバート・アルモーラ(19)
こちらもまだ時間がかかりそうだが、Aで打率.366という高打率を残している。
パワーは成長の余地があるが流石に昨年の全体6位指名といったところか。

ホルヘ・ソーラー(21)
アルモーラが技の外野手ならソーラーは力の外野手だ。
ただしまだ一つ一つステップしている段階なので他の2人と同じく昇格を急がせる必要はない。

ジュニアー・レイク(23)
順調に階段を上ってきて今季はAAAで好成績を残している。
飛びぬけたツールがあるわけではないがポジションのかぶるカストロやバイエズとどう兼ね合いをつけていくのかが気になるところ。


”ニューヨーク・メッツ”

マット・ハービー(24)
今季のサイ・ヤング賞候補の一人であり、既にメッツの不動のエースとなっている。
極めてハイレベルな投球内容で、おそらく今後何年もトップクラスの投手であり続けるだろう。

ザック・ウィーラー(23)
ハービーと並ぶダブルエースの一人になることを期待されている。
この数年間常にトッププロスペクトで有り続けたが、今季はついにメジャーデビューを果たし初勝利もあげている。
ハービーに続くことができるか期待したいが、制球など課題もまだある。

ノア・シンダーガード(20)
順調に成長を続け今季はA+で好成績を残したことでAAに昇格。
制球も優秀で、メジャー昇格までの道のりは予想されているよりも早くなるかもしれない。
メッツとしての理想はハービー、ウィーラー、シンダーガードという3番手までをエース級で固めることだ。

トラビス・ダナウド(24)
サイ・ヤング賞投手を放出してまで獲得したマイナーの捕手で最高の評価を得ている選手。
今季中の昇格は間違いないだろうが、怪我が心配な選手でもある。
チームには野手のプロスペクトが少ないため彼の活躍如何でチームの得点力も変わってくるだろう。




2013年6月28日金曜日

サイ・ヤング賞レースの行方 ”ア・リーグ”

そろそろ前半戦の終了も近づき、先発投手もシーズンの約半分に登板したことになる。
ア・リーグは例年有力候補となる直近のサイ・ヤング賞投手たちが不調に陥っており、一気にブレイクしてきた投手の台頭も目立つ。
日本人が有力候補の一人になっていることからも日本でもその行方は注目されている。
現時点での成績からレースの行方を考察してみよう。

最有力投手
岩隈久志
16試合 7勝3敗 防御率2.26 107.1回 96奪三振 17四球 被本塁打13 WHIP0.89 
QS率0.75 FIP3.34 xFIP3.19
バックホルツのDL入りによって、岩隈は最有力候補に浮上したと言っていいだろう。
勝ち星こそあまり伸びていないが投球内容は抜群であらゆるスタッツがリーグトップクラスだ。
離脱なく進んで200回、防御率2.50の成績でシーズンを終えることができればサイ・ヤング賞は現実のものとなる可能性が高い。
心配なのはアウェイにおける被本塁打の多さと怪我だ。
過去5年のア・リーグサイ・ヤング賞は全員が防御率のタイトルと210投球回をクリアしている。
つまりこれが一つの基準になってくるだろう。
勝ち星のことはそれほど気にしなくてもいいが、投球回のことを考えればDL入りだけは避けなくはいけない。


次点
フェリックス・ヘルナンデス
17試合 8勝4敗 防御率2.70 116.2回 123奪三振 22四球 被本塁打9 WHIP1.10
QS率0.71 FIP2.51 xFIP2.50
彼を次点に据えたのは信頼できる実績に加え、今季の投球内容向上が著しいからだ。
四球と奪三振がキャリアハイのペースで、ここにきて実力がさらに向上している。
投球内容自体はリーグでも1番と言っていいレベルであり、前半戦はやや不運でもあった。
5失点以上したのが3回と打たれる時は結構打たれてしまう試合があったので、後半戦はそういう試合をどれだけ少なくしていけるか。
後半戦への伸びしろが少なくないため、追い込みも期待できる。


クレイ・バックホルツ
12試合 9勝0敗 防御率1.71 84.1回 81奪三振 29四球 被本塁打2 WHIP1.02
QS率0.83 FIP2.47 xFIP3.22
一時は最有力だったが、怪我による離脱によってレースから脱落しかけている。
前述したようにサイ・ヤング賞の1位票を多く得るには200回という数字が重要になってくる。
もし早期復帰できたとしても、規定投球回ならともかく200回を投げるのはかなり難しくなるだろう。
もし近年久しく見ない防御率1点台でタイトルを獲得し、なおかつ190回程度投げられればまだ勝負になるかもしれないが、それも他の投手次第だ。
ただしこのまま負けなしで15勝以上、防御率1点台で行くのなら投票者たちの考えが今どうなっているのかがよくわかる面白い投票にはなるだろう。



ダルビッシュ有 
16試合 7勝3敗 防御率2.95 106.2回 143奪三振 33四球 被本塁打14 WHIP1.00
QS率0.63 FIP3.14 xFIP2.57
穴扱いするのも申し訳ないような好成績なのだが、最近少しペースダウンしつつあるのでこの位置にした。
本拠地の影響を考えればある程度の防御率などの悪化は仕方なく、投票の際はそこはしっかり考慮してもらえるだろう。
しかし突出した部分が三振しかないと280くらいは越えないと他の投手との兼ね合い次第では評価が上がらない。
ただし逆に奪三振という強力な武器があるため、15勝以上、210回以上、防御率2点台でシーズンを終えれば受賞の可能性は一気に跳ね上がる。
今のペースなら十分可能な範囲だが、ここから暑くなるあいだにどれだけ耐え忍べるかが鍵になる。


マックス・シャーザー
15試合 11勝0敗 防御率3.05 103.1回 122奪三振 24四球 被本塁打9 WHIP0.91
QS率0.73 FIP2.54 xFIP2.83
シャーザーは現役でダルビッシュに次いで三振をとれる投手だ。
しかもコマンドも優れているため四球で自滅することもなく、安定感もリーグ屈指のものを持っている。
言ってみればほぼ弱点がないのだが今季なによりすごいのは11勝0敗という数字だ。
いくら勝敗というものが投手の評価を左右するウェイトが少なくなったとは言え、これだけの数字になってくれば話は別だ。
しかも彼はここに来てさらに調子を上げてきており、今最も手のつけられない投手だと言っていいだろう。
ただしまだ200回越えを達成したことがないため、後半戦のスタミナ配分が少々不安材料か。


大穴
クリス・セール
14試合 5勝6敗 防御率2.75 98.1回 104奪三振 23四球 被本塁打9 WHIP0.96
QS率0.79 FIP3.01 xFIP3.00
今季はチームが弱いためあまりピックアップされていないが、セールは今やリーグ最高の左腕の一人になっている。
昨年から正統進化を遂げており、ここまでかなりの安定感を誇っている。
なによりその若さゆえの爆発力が驚異的で、12奪三振以上の試合を既に3度披露している。
もし後半戦ノッてくるようなら一気にレースの中心に躍り出る可能性もある。
あとはチームの援護次第というところだ。


2013年6月26日水曜日

MLBオールスターにふさわしいのは?各ポジション最優秀選手を探す ”ナ・リーグ”

ア・リーグ編に引き続き、次はナ・リーグについてみていこう。
最新の中間発表における各ポジション1位は以下のようになっている。

捕手 ヤディアー・モリーナ
一塁手 ジョーイ・ボットー
二塁手 ブランドン・フィリップス
三塁手 デビッド・ライト
遊撃手 トロイ・トゥロウィツキー
外野手 カルロス・ベルトラン、ジャスティン・アップトン、ブライス・ハーパー


捕手
ヤディアー・モリーナ
73試合 打率.355 5本塁打 42打点 出塁率.399 OPS.904 3盗塁 fWAR3.4
現役最高の守備力を持った選手であり、ポージーやマウアーと並んで現役最高の捕手の一人だ。
日本のファンならWBC準決勝プエルトリコ戦でのモリーナの存在感は忘れることができないのではないだろうか。
どんな投手も信頼を置く絶対的な安心感に加えて近年大きく成長した打撃でMLB史でも指折りの存在になりつつある。
今季は本塁打が減った分二塁打が大幅に増えており、リーグ1位の打率に加えて打撃でもリーグ有数のレベルだ。
投票ではポージーとの接戦になるだろうが、私はモリーナを推したい。


一塁手
ジョーイ・ボットー
78試合 打率.325 14本塁打 38打点 出塁率.439 OPS.963 2盗塁 fWAR3.3
現役最高の左打者であり、出塁の鬼だ。
今季は二塁打が減っているのが少し気になるが、怪我がなければMVP級の活躍をしてくれることに間違いないだろう。


二塁手
マット・カーペンター
73試合 打率.318 6本塁打 30打点 出塁率.399 OPS.871 1盗塁 fWAR3.7
彼の名は聞き慣れないというファンも多いのではないだろうか。
2011年にデビューし2012年はユーティリティーとして114試合に出場し好成績を収めた。
27歳の今季は二塁でプレーし、そのパフォーマンスはかなりのものだ。
盗塁が少ないことを除けばかなり優秀な打者で、高打率・高出塁率に加え二塁打を量産する長打力もある。
さらに守備もかなり良く、いざとなればユーティリティ性もある。
遅咲きでまだあまり名は知られていないが、確かな実力で今後MLBを代表する二塁手になる可能性すらある。


三塁手
デビッド・ライト
73試合 打率.309 12本塁打 41打点 出塁率.392 OPS.923 14盗塁 fWAR3.9
「今年のオールスターはシティフィールドで行われるため、是非ともメッツの選手にスターターとして出てもらいたい。」
そういった思惑がなくともライトはオールスターのスターターにふさわしい選手だろう。
打撃の素晴らしさは言うまでもないが今季は盗塁の上手さも戻っており、 久々に3割30本30盗塁も達成できる可能性がある。
ア・リーグと違いナ・リーグの方は三塁手がそれほどいいわけではないのでライトがこの中では頭一つ分抜け出ている。


遊撃手
トロイ・トゥロウィツキー
61試合 打率.347 16本塁打 51打点 出塁率.413 OPS1.048 fWAR3.9
果たして怪我をしている彼はふさわしいのか?
そう考えるファンも当然いるだろうし、そうなればセグラがふさわしいということになるのかもしれない。
しかし彼の圧倒的パフォーマンスは怪我のことがあってもスターターにふさわしいものだと私は考えている。
復帰は早くてオールスター前になりそうで、選出されたとしても怪我で辞退ということになるかもしれないが、万全なら彼以上の遊撃手などいないことだけは間違いないのだ。


外野手
カルロス・ゴンザレス
76試合 打率.299 21本塁打 58打点 出塁率.368 OPS.982 14盗塁 fWAR3.8
ゴンザレスは今まで内弁慶なクアーズヒッターの代表格として語られてきた。
しかし少なくとも今季に限っては彼は場所に関わらず正真正銘の強打者だ。
今季最も3割30本100打点30盗塁に近い男であり、走攻守全てにおいて優れた5ツールプレイヤーであることは間違いない。


カルロス・ゴメス
72試合 打率.313 12本塁打 37打点 出塁率.355 OPS.925 15盗塁 fWAR4.2
数年前までのゴメスは守備がうまく足の速い控え外野手だった。
レギュラーになった昨季はそこにパワーという評価がついた。
そして今季のゴメスは走攻守をハイレベルに備えたリーグ有数のセンターだ。
抜群の身体能力がついに開花し、特に打撃において大きな進化を遂げている。
四球を選ばないのはマイナス評価だが、今のところはそこはあまり気にしなくていいレベルのプレーをしている。
この活躍が本物なのかは来季以降も見てみる必要があるが、少なくとも今季はMLBでも有数の活躍をしている。


カルロス・ベルトラン
70試合 打率.307 18本塁打 48打点 出塁率.347 OPS.895 1盗塁 fWAR1.3
元5ツールプレイヤーのベルトランは、守備の衰えは顕著ながらまだまだ打撃はリーグ有数のスイッチヒッターなので再確認させてくれる。
36歳だがこの調子であと2年程やれるのであれば400本塁打を達成して殿堂入りの可能性も大きく上昇するだろう。
随所に衰えは見えるが、まだまだ十分一線級だ。



MLBオールスターにふさわしいのは?各ポジション最優秀選手を探す ”ア・リーグ”

今年のMLBオールスターは現地時間の7月16日に行われる。
NPBでは既に投票が終わり、またその選考内容に疑問の声も上がっている。
MLBでももちろん人気チームの選手などは票が集まりやすいのだが、流石に今回のNPBのようなことはないだろうと思いたい。
さて最新の中間発表では各ポジションの1位は以下のようになっている。

捕手 ジョー・マウアー
一塁手 クリス・デイビス
二塁手 ロビンソン・カノー
三塁手 ミゲル・カブレラ
遊撃手 JJ・ハーディ
外野手 アダム・ジョーンズ、マイク・トラウト、ニック・マーケイキス
DH デビッド・オルティズ

流石にそうそうたる面々が並んでいるが、とにかくオリオールズ勢が多い印象だ。
もちろんここから二転三転するポジションもあるだろうが大体は固まってきたと言っていいだろう。
しかしファン投票というのはただ各ポジションの最優秀を決めるものではない。
むしろ知名度や人気度というもののウェイトが大勢を占めている。
そこで今回はそういう面を度外視した純粋な能力・成績面でオールスターのスターターにふさわしい選手を探してみたいと思う。


捕手
ジョー・マウアー
68試合 打率.330 8本塁打 25打点 出塁率.413 OPS.916 盗塁阻止率.389 fWAR3.4
今年30歳を迎えた天才捕手はア・リーグの捕手においては飛び抜けた存在だ。
守備面はウィーターズには劣るが今季は阻止率も優秀で、打撃は捕手の枠を出て首位打者もまだ十分射程圏内にとらえている。
さらにスタイルに少し変化を加えたのか三振が増えた反面二塁打も量産しているため中距離ヒッターとして長打の面での貢献度も高い。
そして捕手として先発出場したのは45試合で、一塁とDHで出場することも多いため健康面でも今季は悪くない。
現時点は彼以外にオールスターのスターターにふさわしい捕手はいないだろう。


一塁手
クリス・デイビス
76試合 打率.331 27本塁打 70打点 出塁率.408 OPS1.116 fWAR4.2
リーグにおいて打率2位、本塁打1位、打点2位とミゲル・カブレラと首位打者争いを続けている彼以外にオールスターがふさわしい一塁手は今季は存在しない。
三振は多いし守備も良くないがそんなことはもはやどうでもいいだろう。
昨年の初の30本塁打越えを経て一気にブレイクした感があるが、マイナーで彼が残していた成績を考えるとそれほど驚くべきことでもないのかもしれない。
デイビスはカブレラと並んで現在MLBで最も危険な打者だ。


二塁手
ダスティン・ペドロイア
77試合 打率.311 4本塁打 41打点 出塁率.394 OPS.812 10盗塁 fWAR2.7
長打を重視するのなら断然カノーだが、私はトータルパッケージとしてのレベルの高さからペドロイアを推したい。
今季のペドロイアは本塁打は少ないが例年通りに二塁打は量産できているため長打もないわけではない。
打率を3割で維持できるのなら打撃貢献度としては全く問題ないだろう。
欲を言えばもう少し頑張って出塁率を4割にまでのせてほしいところか。
彼が守備・走塁面での貢献度が最も高い二塁手の一人であることにも異論はないだろう。
純粋に打撃だけで考えるならカノーやキプニスは素晴らしいがトータルではペドロイアのバランスの良さが際立っている。


三塁手
ミゲル・カブレラ
74試合 打率.370 20本塁打 75打点 出塁率.462 OPS1.106 2盗塁 fWAR4.8
間違いなく現役最高の右打者であり、もはや試合に出てくれるのであれば守備や走塁はどうでもいいと思える稀有な存在だ。
リーグにおいて打率1位、本塁打3位、打点1位と2年連続で三冠王を狙える位置につけている。
今季のア・リーグは三塁手のレベルが非常に高く、健康面が充実しており攻守において素晴らしい活躍を見せているロンゴリアや20歳とは思えないパフォーマンスを発揮しているマチャド、思わぬブレイクを見せたドナルドソン、相変わらず安定しているベルトレなど攻守に渡って活躍中の選手が多い。
しかしそんな中でも打撃だけのカブレラがやはり最も素晴らしい活躍を見せていると言わざるをえない。
本当に恐ろしい打者だ。


遊撃手
ジョニー・ペラルタ
69試合 打率.324 7本塁打 34打点 出塁率.383 OPS.867 2盗塁 fWAR2.8
パワーでは守備も素晴らしいハーディが頭一つ分抜けているのだが、今季はやはりペラルタだろう。
序盤から高打率を維持し続け今に至っても落ちてきてはいない。
二塁打量産の中距離ヒッターとして長打の面でも大きく貢献している。
守備も良く、問題はどこまでこの調子を維持できるのかということだが、今のところは攻守共にハイレベルだ。


外野手
マイク・トラウト
76試合 打率.306 12本塁打 46打点 出塁率.384 OPS.918 18盗塁 fWAR4.1
序盤はやや不調で心配されたがどんどん調子を上げている。
昨季の活躍が素晴らしすぎたために今季どこまで成績を落とさずにいけるのかという懸念は出ていたが、今季も彼は史上最高の21歳の一人だ。
シーズンが終わる頃にはMVP候補にもなっているだろうが、チーム事情のせいでセンターかレフトのどちらかに固定できていないのが気になるところだ。


ジャコビー・エルズベリー
71試合 打率.289 1本塁打 26打点 出塁率.353 OPS.753 31盗塁 fWAR2.6
野球の華は本塁打だけではない、足で魅せる選手というのも必要だ。
大ブレイクした2011年から一転不振に陥った2012年だったが、今季は打撃はそこそこながら走・守における貢献が著しい。
怪我さえなければ盗塁王も間違いないだろうし、うまくいけばキャリアハイの70盗塁を超えることもできるかもしれない。
打撃の調子も上がっており、オールスター前には走攻守全てにおいてずば抜けたパフォーマンスになっているかもしれない。


アダム・ジョーンズ
77試合 打率.300 15本塁打 55打点 出塁率.322 OPS.830 9盗塁 fWAR1.9
ある意味典型的な以前なら非常に高く評価されたであろう選手がジョーンズだ。
確かに素晴らしい身体能力を持っており、守備も華やかでスピードがある。
しかし平均以下の出塁率や中身は酷い守備が現代では評価を落とす要員になっている。
とはいえ飛び抜けた選手がいない今季のア・リーグ外野手事情を考えれば、やはりジョーンズは選ばれるべきだろうと思う。
3割30本100打点ペースなのは間違いなく、スター性も備えている。
なによりデイビスやマチャドとともに好調オリオールズの顔的存在だ。
リーグにおける優秀な外野手であることには異論はない。


DH
デビッド・オルティズ
59試合 打率.316 16本塁打 55打点 出塁率.392 OPS1.005 2盗塁 fWAR2.2
復帰が遅れたためにやや試合数が少ないが、そこからハイペースで数字を積み上げ今ではどの部門でもリーグトップラスの打撃成績になっている。
年をとってむしろ打撃が洗練されてきおり、彼ほどミスターDHにふさわしい選手はいない。
チームも好調で充実した一年になるはずだ。







2013年6月22日土曜日

MLB最激戦区ア・リーグ東地区

今日の試合でブルージェイズが勝利(川崎がMLB第1号本塁打を放つなどなかなかにメモリアルだった)し、勝率を5割にまで戻した。
これによってア・リーグ東地区の順位は以下のようになっている。

ボストン・レッドソックス 45勝 31敗 勝率.592 
ボルチモア・オリオールズ 42勝 32敗 勝率.568
ニューヨーク・ヤンキース 40勝 33敗 勝率.548
タンパベイ・レイズ 38勝 36敗 勝率.514
トロント・ブルージェイズ 36勝 36敗 勝率.500

これでこの地区のチームはすべて勝率5割越えという非常にハイレベルな状態になっている。
当初はレッドソックスが独走するかとも思われたが、他のチームもよくついていっている。
特にヤンキースがまだこの順位を維持していることには驚きだ。
戦力を考えればヤンキースは最下位でも全くおかしくないが、やはりこのチームには”勝者のメンタリティ”が備わっているのか。
しかしこの地区は本当に恐ろしい。
これだけの激戦を演じておきながら、レッドソックス以外は主力が怪我から復帰するという伸びしろもあるのだ。
オリオールズはチェン、ヤンキースはジーターやグランダーソン、レイズはプライス、ブルージェイズはレイエスやモローとそれぞれ主力を欠いた状態だ。
僅差の戦いだけに、少しの戦力アップ(あるいはダウン)で大きく順位が入れ替わってしまうだろう。
首位レッドソックスもそれほど安泰というわけではない。
この状態が1月ほど続けば、フラッグディールでこの地区の全チームが買い手にまわるという異例の自体も起こるかもしれない。

以前から最激戦区と言われていたア・リーグ東地区だが、昨年まではまだオリオールズやブルージェイズは優勝争いできるレベルになかった。
それが今や全チームが優勝争いを狙える位置にきたのだ。
開幕前も全く予想がつかなかったが、今もどこが優勝するのかという確信は全く持てない。
おそらくは最後の1試合までファンを楽しませてくれるのではないだろうか。

2013年6月21日金曜日

今季最高の先発ローテーションはどこだ

最高の先発ローテーションを探すにあたって、まずは候補となる両リーグの先発の防御率、WHIP、被OPS、1試合ごとのイニング数のトップ3を見てみよう。

防御率
ア・リーグ
1位 デトロイト・タイガース 3.46
2位 カンザスシティ・ロイヤルズ 3.64
3位 ボストン・レッドソックス 3.69

ナ・リーグ
1位 セントルイス・カージナルス 2.91
2位 シンシナティ・レッズ 3.17
3位 アトランタ・ブレーブス 3.38

WHIP
ア・リーグ
1位 デトロイト・タイガース 1.14
2位 オークランド・アスレチックス 1.21
3位 シアトル・マリナーズ 1.22

ナ・リーグ
1位 セントルイス・カージナルス 1.13
2位 シンシナティ・レッズ 1.15
3位 ワシントン・ナショナルズ 1.18

被OPS
ア・リーグ
1位 デトロイト・タイガース .645
2位 オークランド・アスレチックス .699
3位 シカゴ・ホワイトソックス .713

ナ・リーグ
1位 セントルイス・カージナルス .642
2位 シカゴ・カブス .666
3位 ピッツバーグ・パイレーツ .671

1試合ごとの先発イニング数
ア・リーグ
1位 カンザスシティ・ロイヤルズ 6.32
2位 デトロイト・タイガース 6.30
3位 シアトル・マリナーズ 6.10

ナ・リーグ
1位 シンシナティ・レッズ 6.32
2位 セントルイス・カージナルス 6.32
3位 シカゴ・カブス 6.20

最初の3つは仕事の質、最後の1つは仕事の量を示しているものだ。
これらを見ると、質・量ともに最も充実しているのはア・リーグではタイガース、ナ・リーグではカージナルスであることがわかる。

そこでそれぞれの先発ローテーションを比較してみよう。

”デトロイト・タイガース”
ジャスティン・バーランダー
15先発 8勝5敗 防御率3.72 92.0回 106奪三振 32四球 7被本塁打 WHIP1.35

アニバル・サンチェス
13先発 6勝5敗 防御率2.76 81.2回 101奪三振 23四球 4被本塁打 WHIP1.15

マックス・シャーザー
14先発 10勝0敗 防御率3.08 96.1回 116奪三振 24四球 8被本塁打 WHIP0.91

ダグ・フィスター
14先発 6勝4敗 防御率3.21 92.2回 76奪三振 14四球 3被本塁打 WHIP1.12

リック・ポーセロ
13先発 4勝4敗 防御率4.74 76.0回 63奪三振 13四球 10被本塁打 WHIP1.17


”セントルイス・カージナルス”
アダム・ウェインライト
15先発 10勝4敗 防御率2.37 110.0回 100奪三振 9四球 4被本塁打 WHIP1.01

シェルビー・ミラー
14先発 8勝4敗 防御率2.08 86.1回 96奪三振 19四球 6被本塁打 WHIP0.96

ランス・リン
15先発 10勝1敗 防御率3.42  92.0回 94奪三振 34四球 5被本塁打 WHIP1.16

ハイミ・ガルシア
9先発 5勝2敗 防御率3.58 55.1回 43奪三振 15四球 6被本塁打 WHIP1.30

ジェイク・ウェストブルック
8先発 3勝2敗 防御率1.76 51.0回 21奪三振 22四球 0被本塁打 WHIP1.39

タイラー・ライオンズ
5先発 2勝3敗 防御率4.65 31.0回 20奪三振 8四球 3被本塁打 WHIP1.16


両チームとも素晴らしい陣容だが、それぞれに勝っている点と劣っている点がある。
まずタイガースローテーションは4番手までの安定感がずば抜けている。
四球を出さず三振をとれ本塁打を打たれないというセイバーメトリクス的にも非常に優れた投球内容で、プレーオフになればこの4人のローテーションを打ち崩すことはどんな打撃のいいチームにも難しいだろう。
全員が実績のある投手である点も安心できる要素だ。
対するカージナルスローテーションは1,2番手の活躍度がずば抜けており、3番手のリンも堅実に投げ抜いてくれる。
今季はガルシアとウェストブルックも好調だったが、両者ともに離脱しウェストブルックは復帰したもののガルシアが60日のDL入りとなっている。
さらにこの中で過去に200回越えを記録したことがあるのがウェインライトのみと、実績にはやや不安定なものもある。
タイガースに比べると健康面には不安を感じるローテーションだ。

どちらも甲乙付けがたいが、私はア・リーグというDHのある環境下でもってなおこのパフォーマンスを見せているタイガースローテーションに軍配をあげたい。








2013年6月20日木曜日

ブレイクの兆しが見える選手たち

毎年思いもよらなかったブレイクをする選手というのは何人か出現する。
近年でその最たる例と言えばホゼ・バティスタだろう。
もちろんジャコビー・エルズベリーのように大ブレイクしたと思ったらまた翌年以降は元通りになってしまうような例もあるが、 今回はそんなブレイク候補選手を発掘したい。


ジョーダン・ライルズ(アストロズ)
4勝1敗 防御率3.22 58.2回 46奪三振 16四球 WHIP1.28
元々アストロズのトッププロスペクトとして期待されており、2011年にメジャーデビューを果たすもあまりいい結果は残せず、2012年も低調な出来におわった。
今季は4月をAAAで過ごし、5月2日に今季初登板。
5月12日に4回8失点という大炎上をした以外では3失点したのすら1度だけとかなりの安定感を誇っている。
特に6月は4試合に登板して防御率1.69という抜群の成績だ。
まだ22歳だがプロスペクトがようやく開化したという感じで、今季のアストロズの希望の星となっている。
投球スタイルは制球がよくストライクゾーンで勝負するというタイプで、三振を多くとるタイプではないが安定感のある投手になれるだろう。


ジョシュ・ドナルドソン(アスレチックス)
71試合 打率.303 10本塁打 44打点 出塁率.369 OPS.867 2盗塁
ドナルドソンはあらゆるポジションを守れるユーティリティという側面が強く、今季は三塁のレギュラーになれるかどうかというレベルで、中島とのレギュラー争いをする可能性も高かった。
しかし今季はスプリングトレーニングから好調で、シーズンに入ってからもその好調ぶりを維持。
長距離ヒッター的な打撃とうまい守備でチームに大きな貢献をしている。
ピッチャーズパークを本拠地にしながらのこの成績は賞賛に値するだろう。
6月に入って調子を落としている点が気がかりで、この夏場が踏ん張りどころになる。


マイク・マイナー(ブレーブス)
8勝2敗 防御率2.68 90.2回 85奪三振 18四球 WHIP0.97
屈指のプロスペクトとしてデビューしたがイマイチそのポテンシャルを発揮しきれず、昨季はローテーションに定着したが3,4番手レベルの活躍ぶりだった。
しかし今季のパフォーマンスはエース級で、元々良かった制球にも磨きがかかり制球力と奪三振力のバランスのよさはMLB屈指のものとなっている。
ブレーブスの毎年好選手を輩出する組織力や指導力には本当に感服させられる。


トラビス・ウッド(カブス)
5勝6敗 防御率2.74 92.0回 64奪三振 28四球 WHIP1.00
支配的な投球をするわけではないが、毎回大崩れすることなく抑えるためQS率93%(MLB1位)という数字を残している。
ただし運に恵まれている傾向にも強いので後半戦、あるいは来季以降に振り戻しが来る可能性も低くはない。

2013年6月19日水曜日

熾烈なナ・リーグ新人王争い

今季のナ・リーグ新人王争いは非常にハイレベルなものになっている。
現時点で有力候補と思われる選手を数人挙げてみよう。

シェルビー・ミラー(カージナルス)
8勝4敗 防御率2.08 86.1回 96奪三振 19四球 WHIP0.96
開幕からローテ入りし、非常に安定した成績を残している。
新人としてはこれ以上ないくらいの出来だろう。
防御率のタイトルを狙える位置にもつけており、チームの好調ぶりも相まって素晴らしいルーキーイヤーになりそうだ。
強いて言えばあまり長いイニングを投げられていないのが欠点だが、一年目の投手にはむしろイニング数的には丁度いいはずだ。


ヒョンジン・リュ(ドジャース)
6勝2敗 防御率2.85 85.1回 75奪三振 25四球 WHIP1.18
あらゆる点で期待値以上の活躍をしてくれていると言えよう。
もしドジャースが彼と契約していなかったらと思うとぞっとするファンも多いはずだ。
大崩れすることも少なく安定感のあるイニングイーターとして素晴らしい仕事をしている。
例年なら新人王の最有力候補と言ってもいい成績だがミラーがそれを阻んでいる上に、他のルーキーに比べて年齢の点から投票で不利になるだろう。


フリオ・テヘラン(ブレーブス)
5勝3敗 防御率3.36 83.0回 66奪三振 16四球 WHIP1.20
ペドロ・マルチネス2世と言われ2011年にデビューするも昨年は不振に陥ったが、今季はスプリングトレーニングでその実力を発揮し、開幕メジャーを勝ち取った。
序盤は打たれることも多かったものの徐々に調子を上げていき5,6月は防御率2点台の好投を見せている。
真価を発揮したペドロはここから追い上げることができるだろうか。


ホセ・フェルナンデス(マーリンズ)
4勝3敗 防御率3.11 72.1回 77奪三振 27四球 WHIP1.15
低迷するマーリンズにおいて数少ない希望の星だ。
予想されていたよりも早い昇格となったためまだ20歳で他のルーキーに比べると若い。
どの点に関してもずば抜けた能力を持っているものの、チームが弱いせいもあってミラー、テヘランなどに比べると印象度が弱い。
クレメンスやバーランダーとも比べられる逸材であり、将来性も他の候補と比べて勝るとも劣らないだけに影に隠れてしまった感があるのは少々もったいない。


ジム・ヘンダーソン(ブルワーズ)
2勝2敗 防御率1.59 22.2回 26奪三振 5四球 WHIP0.88
ブルワーズの新クローザーだが、いかんせんチームがなかなか勝てないためにセーブ数が稼げない。
クローザーは新人王を獲得しやすく彼自身の投球内容も抜群なのだがセーブ数が少ないとどうしても印象度で劣ってしまう。
また今季は先発に逸材が多く出てきてしまったのも彼にとっては不運だった。
ただし遅咲きだったために年齢は30歳と高い。


ジェド・ジョーコ(パドレス)
60試合 打率.284 8本塁打 25打点 出塁率.341 OPS.802
本拠地がペトコ・パークだということを考えるとこの成績はかなり優秀(ただし今季よく打っているのはホームのほうだ)。
昨季マイナーで3割30本100打点を記録していることからも打撃に関してはここからさらに真価を発揮する可能性がある。
開幕から出場し続けているという点も強みだったが、6月9日の試合を最後に15日のDL入りしている。
早期復帰ができれば大きな問題にはならないだろうが、今季は新人王候補に優秀な先発投手が多過ぎるため、受賞するには後半戦で大爆発する必要がある。
守備・走塁での貢献度が高くないのもネックだ。


エバン・ガティス(ブレーブス)
53試合 打率.252 14本塁打 37打点 出塁率.317 OPS.894
そのシンデレラストーリーが話題にもなり、パワーに関しては今季のルーキーの中で頭一つ抜けている。
しかしマキャンが復帰したことで出場機会が制限され、あまり成績を伸ばせない可能性が高い。
30本塁打に到達しても他の候補が落ちてこない限りは受賞は難しいだろう。


上記を見ても解るとおり、ミラーが頭一つ抜け出ている状態だ。
彼の成績はたいていのチームでエースになれるもので、好調カージナルスを象徴している存在と言ってもいいかもしれない。
他にも投手には有力候補が複数おり、彼らも後半戦次第ではまだわからない。
反面少し弱いのが野手の方で、特に走攻守においてトータルで活躍するような選手が皆無だ。
まだ出場試合数が少ないながらもアンソニー・レンドンやヤシエル・プイグなどは面白い存在で、ここからの活躍には大いに期待したい。
今日はメッツのトッププロスペクトであるザック・ウィーラーもメジャーデビューする予定で、今季のナ・リーグはルーキーの当たり年と言っていいだろう。





2013年6月16日日曜日

マイナーで活躍する将来のエースたち

シェルビー・ミラー、ホゼ・フェルナンデス、ゲリット・コール、カルロス・マルチネス、マイケル・ワカ。
今季も将来のエース候補が次々とメジャーデビューを果たし、中にはすでにローテーションの重要な立場を獲得した投手もいる。
しかしマイナーにはまだまだプロスペクトたちが眠っている。
今季好調な投手たちを紹介していこう。

タイワン・ウォーカー(20) シアトル・マリナーズ
AA 13先発 3勝7敗 防御率2.56 77.1回 84奪三振 30四球 WHIP1.06
2010年ドラフトで1巡目指名を受けたウォーカーは将来的にマリナーズのエースになると見られている。
典型的なパワーピッチャーで、制球にはまだまだ改善余地があるが将来性は抜群だ。
2014年頃には昇格するはずで、その頃にはチームの陣容はある程度整っているだろう。


ジェイムソン・タヤン(21) ピッツバーグ・パイレーツ
AA 12先発 3勝5敗 防御率3.11 66.2回 71奪三振 27四球 WHIP1.37
パイレーツは上位指名を得てもうまく育てることができないというチームだったが、近年のドラフトに関しては順調だと言っていいだろう。
2011年全体1位のコールはすでにメジャーに送り出したし、2010年全体2位のタヤンも順調に育っている。
コールと同じくパワーピッチャーで、2014年あたりに昇格し数年後にはコールとの二枚看板になっている可能性が高い。


アーチー・ブラッドリー(20) アリゾナ・ダイヤモンドバックス
A 5先発 2勝0敗 防御率1.26 28.2回 43奪三振 10四球 WHIP1.12
AA 8先発 5勝1敗 防御率1.34 47.0回 47奪三振 24四球 WHIP1.19
ダイヤモンドバックスのローテーションは近年かなり充実してきている。
今季はエースのケネディが不調のかわりにコルビンが屈指の安定感を誇っており、またマイナーにもまだプロスペクトがいる状態だ。
トッププロスペクトだったバウアーを放出しても大きな痛手になっていないのはマイナーが充実しているからだろう。
そのプロスペクトの一人がブラッドリーで、2011年全体7位指名投手だ。
球威があり奪三振能力が極めて高い。
制球は改善しなくてはならないが奪三振タイプの少ないダイヤモンドバックスにとっては彼の成長は嬉しいだろう。
今のペースなら2014年後半頃にはメジャーデビューを果たしているかもしれない。
そうなればスキャッグス、コルビン、ブラッドリー、ケネディ、ケーヒルという若く安定感のある脅威のローテーションが誕生するかもしれない。


ジャスティン・ニコリーノ(21) マイアミ・マーリンズ
A 13先発 3勝1敗 防御率2.24 68.1回 43奪三振 13四球
ニコライノは2010年ドラフトでブルージェイズに2巡目指名され、レイエス、バーリー、ジョンソンなどが絡んだ一連の大型トレードでマーリンズに移籍した。
速球に球威はないが、非常にバランスがよく特に弱点と言えるものがない。
さらにチェンジアップはハメルズとも比較されるレベルにあり、メジャーでも成功しやすいタイプの投手だ。


ロバート・スティーブンソン(20) シンシナティ・レッズ
A 12先発 5勝3敗 防御率2.97 66.2回 85奪三振 17四球
2011年ドラフト全体27位の速球派で、特に速球の評価が非常に高い。
その速球の質は奪三振の数に現れており、将来的にレッズのエースとなる可能性が高い。


ノア・シンダーガード(20) ニューヨーク・メッツ
A 12先発 3勝3敗 防御率3.11 63.2回 64奪三振 16四球
2010年ドラフトで全体38位指名を受けてブルージェイズ入団後、ディッキーのトレード要員になりメッツへ移籍。
速球の評価が高いものの変化球などがやや未熟だったが徐々に成熟されつつある。
将来的にはハーベイ、ウィーラーとの三枚看板を形成できるかもしれない。




 

2013年6月14日金曜日

マイナーで活躍する将来のスーパースターたち

メジャーでの活躍度を予見する際にマイナーでの活躍度というものは非常に重要になってくる。
マイナーで打てなかった選手がメジャーで打てるようになるというのは稀で、昇格には優秀な成績が必要だ。
マイナーではどれだけ打ってもメジャーでは打てない二軍の帝王のような選手もいるが、基本的にマイナーで好成績を残せるならメジャーでの可能性も広がる。
今回はプロスペクトであり、なおかつ結果も残している未来の大砲候補を紹介しよう。

ミゲル・サノー(20) ミネソタ・ツインズ
A 56試合 打率.330 16本塁打 48打点 出塁率.424 OPS1.079
ツインズの将来を担うと予想されているのがMLBのプロスペクトランキングでも上位に名を連ねるサノーだ。
底知れぬパワーを秘めており三振は多いが選球眼も悪くない。
強肩だが三塁守備の評価は低く、今後の課題となっている。
来季あたりにはメジャー昇格し、数年後には本塁打王争いに顔を出す可能性も高い選手だ。

ジョージ・スプリンガー (23) ヒューストン・アストロズ
AA 62試合 打率.302 18本塁打 50打点 出塁率.405 OPS1.017 
今MLB最弱のチームと言えばほとんどのファンがアストロズの名を挙げるだろう。
アストロズはウェーバーを利用してドラフトで上位選手を獲得しているが、2011年ドラフトで1巡目(全体11位)で活躍したのがスプリンガーだ。
パワーとスピードを兼ね備えた5ツールプレイヤーというのが将来像だったが、その両面において開化しつつある。
三振が多いのはきになるが今季中にAAAまで昇格し、来季にはメジャー昇格も果たせるだろう。

ウィル・マイヤーズ(22) タンパベイ・レイズ
AAA 60試合 打率.283 13本塁打 54打点 出塁率.358 OPS.872
オフにシールズを交換要員としてトレードされ、今季のア・リーグ新人王候補とも言われているマイヤーズは序盤はあまり本塁打が出ていなかったがようやくギアがかかってきたようだ。
昨季はマイナーで37本塁打も記録し、団子状態のア・リーグ東地区でレイズが抜け出すための救世主になれるのか注目だ。

ハビアー・バイエズ(20) シカゴ・カブス
A 59試合 打率.285 13本塁打 44打点 出塁率.340 OPS.897
2011年ドラフトで全体9位指名を受けた逸材で、打撃面、特にパワーの潜在能力を高く評価されている。
昇格には時間がかかるが、彼は低迷するカブスを救う英雄になれるだろうか。

マイク・ズニーノ(22) シアトル・マリナーズ
AAA 47試合 打率.238 11本塁打 43打点 出塁率.303 OPS.806
2012年ドラフト全体3位指名を受けたズニーノは、昨季プロデビューすると早々にそのポテンシャルの高さを見せつけた。
パワーの評価が高くマリナーズ待望の大砲になれるか、というところで6月12日にメジャーデビューを果たした。
なかなか捕手を固定できないマリナーズにおいて不動の正捕手になれるか注目である。
うまくいけばチームリーダーとしての素養もあいまってチームをいい方向へ導けるかもしれない。 
 

 

2013年6月12日水曜日

全米1位投手ゲリット・コール、ついにメジャーデビュー

パイレーツの期待の星ゲリット・コールがついにそのベールを脱いだ。
彼が全体1位でパイレーツに指名されたのは2011年のこと。
同期であるトレバー・バウアーやディラン・バンディは一足先にデビューを果たしているが、コールの道のりも順調そのものだ。
プロ一年目となった2012年にはA~AAAの三つのカテゴリでプレーし、防御率2.80 132.0回 136奪三振と文句のつけどころのない成績を残した。
二年目となった今季はスプリングトレーニングに参加し防御率3.60とまずまずの結果をあげ、開幕からAAAでプレーして防御率2.91とこれまた安定した数字を残した。
そして今日メジャーデビューを果たしたわけだが、結果は6.1回を2失点 2奪三振 無四球 被安打7で勝ち投手というものだった。
今季はAAAでも奪三振が少なく、そこが今後の課題になってくるだろう。
しかしデビュー戦でこの結果は上々。
ストラスバーグ程の鮮烈デビューとはいかなかったものの、初回先頭打者をいきなり99mphの速球で空振り三振にきってとるなど見せ場もつくった。
数年後にはリーグ屈指のパワーピッチャーへと成長し、パイレーツのエースになっている可能性は低くないだろう。
またパイレーツのマイナーには21歳の全米2位投手ジェイムソン・タヤンも控えており、コールとの二枚看板になることが期待されている。
パイレーツのマイナーには他にもハイレベルな有望株が投打に複数おり、既に活躍しているマッカッチェンやマーテもあわせて黄金期を築く下準備は整っている。
今季はチームも好調で、若手とベテランがうまく機能するハイブリッドなチームが出来上がっている。
長らく低迷していたパイレーツの逆襲はここから始まるのかもしれない。

2013年6月11日火曜日

ヤシエル・プイグはドジャースを救えるのか?

6月3日にメジャーデビューを果たした22歳のキューバ人スラッガーが今猛威をふるっている。
ドジャースは昨年6月に亡命を果たしたプイグと7年42Mドルという契約を交わした。
それからマイナーで23試合に出場し、打率.354 5本塁打 OPS1.076というずば抜けた数字を残して迎えた今季のスプリングトレーニングで彼は注目の的となった。
27試合に出場し打率.517 3本塁打 OPS1.328という成績はいくらスプリングトレーニングとは言え目をみはらずにはいられなかった。
今季中のメジャー昇格はほぼ確実だと見られており、実際にマイナーではもう何も証明すべきことはいわんばかりに好成績を残していた。
しかしドジャースにはケンプ、イーシア、クロフォードという実績ある外野手が揃っていたことで、プイグにはなかなかお鉢が回ってこず、非常にもったいない状態に陥っていたのだ。
しかしケンプとクロフォードがほぼ同時期に揃ってDL入りしたことでピュイグにも白羽の矢がたった。
そして迎えたデビュー戦では早速2安打と結果を残し、翌日には2本塁打を放つという鮮烈なデビューを飾った。
それからもグランドスラムを放つなど勢いは止まらずにここまで8試合で打率.500 4本塁打 OPS1.453と驚異的な活躍を見せている。
四球をあまり選ばないというキューバ人打者の特徴は受け継いでいるものの、ここまで打てるのならもはやそんなことはどうでもいいとも思える。
得点力不足に喘いでいたドジャースにとって彼は願ってもない存在だろう。

しかしここで同時に一つの問題も浮き上がってくる。
ケンプ、イーシア、クロフォードはいずれも巨額の長期契約を結んでいる選手であり、不調だろうとマイナーや控えに置くことは難しい選手たちだ。
今季に限って言えば、クロフォードは好調ながら相変わらず怪我がち、ケンプとイーシアは不調と外野はかなり不安定になっている。
ケンプとクロフォードが怪我から戻ってきた際に、プイグをどうするのか、である。
明らかに控えに置くようなレベルの選手ではないし、悲惨なドジャース打線の中で貴重な長打を打てる打者だ。
とは言え外野手を3人までしか出せない以上、誰かが割を食うことになる。
いつまでたっても左投手を打てないイーシアや、今季の好調ぶりでやや評価が戻りつつあるクロフォードをトレード要員にするという選択肢も見え始めてきた。
そうして優秀なリリーバーを獲得すれば、ドジャースも徐々に上向きになっていくだろう。
怪我人が復帰してきた際にドジャースがどういう選択をするのか非常に興味深いところである。

2013年6月9日日曜日

MLBの”打てる”投手たち

このほど日本では大谷の二刀流が話題になっており、色んな論議を招いている。
スケールの大きな話だが、今のところは両方である程度の結果を残しているあたり、やはり並みの選手ではないのだろう。
しかし投手と野手の兼任という二刀流というのはあまり前例がなくても、投手から野手へ、あるいは野手から投手への転向というのはそれほど珍しい話ではない。
日本でなら糸井が真っ先に思い浮かぶところだし、MLBでなら最近はリック・アンキールやケンリー・ジャンセンなどの名前が出てくるだろう。
彼らのように投手でありながら打てる才能を秘めた投手、あるいは野手に集中すれば成功するのではないかと思える投手は日米問わず現れるものだ。

そういう投手として現役でおそらく最も有名なのはカルロス・ザンブラーノだろう。
通算打撃成績は打率.238 24本塁打 71打点 OPS.636と現役では最多の本塁打数を誇っている。
同僚だった福留は「まず投手なのに両打ちという時点で意味が分からない」、「打てないと打たれた時より悔しそうにする」と語ったことがあり、その打撃へのこだわりがよくわかる。
個性あふれるMLBにおいてもこれだけのキャラクターは珍しい。

他にもザンブラーノほどではないが打てる投手というのは若いなかにも何人かいる。
まずはザンブラーノ二世になりそうなパワーを持つメキシカンのヨバニ・ガヤルドだ。
通算打撃成績は打率.208 12本塁打 40打点 OPS.610で、本塁打と打点のペースがザンブラーノとほぼ同じだ。
今季は既に2本塁打放っており、シーズン終了までにまだまだ打ってくれそうな気配がある。

他にはアダム・ウェインライト、マット・ケイン、ブロンソン・アローヨが通算6本塁打とパンチ力がある。
さらに今後に非常に期待できる投手がトラビス・ウッドだ。
ウッドは今季MLB2位のQS率を誇るなど投手としても開眼しつつあるが、打者としてのパワーにもなかなか面白いものがある。
今季は2本塁打を放っており、通算本塁打数は5本になった。
現時点での本塁打率はガヤルドやザンブラーノと同じレベルにある。
26歳と若いこともあって数年後の打撃成績が楽しみである。


2013年6月7日金曜日

2013年MLBドラフト

今年もMLBドラフトが始まった。
日本と同じくMLBにおいてもドラフトというのは非常に重要なイベントだ。
日本のくじ引きのようなエンターテインメント性はないかもしれないが、ドラフト上位選手の活躍ぶりを見ればその重要性は言わずと知れる。
さらにトレードが盛んなMLBではドラフトした有望株が交換要員になることも多いため、上位チームも下位チームもあらゆる面でドラフトについて考えなくてはいけない。
MLBのドラフトと言えば完全ウェーバー制が採用されているが、今年は二年連続でアストロズが全体1位指名権を獲得することになった。
昨年獲得したのはプエルトリコの大型遊撃手カルロス・コレアで、彼は今季マイナーでそれなりの活躍を見せている。
高卒入団だったため彼が台頭するようになるのは数年後になるだろう。
そのアストロズが今季の全体1位に選んだのはマーク・アペルだ。
彼は昨年も全体1位指名候補だったがボラス物件ということとアストロズが全体1位指名しなかったことが響いて結局指名したのは全体8位のパイレーツだった。
結果的に契約面で折り合いがつかずアペルは1巡目では唯一の契約破談選手となった。
6フィート4インチの195ポンドと痩身のアペルは90マイル中盤の速球の評価が非常に高く、アストロズは念願のエース候補を手に入れることになるだろう。
もちろんアストロズがアペルの要求通りの契約を用意することができればの話だが。

以下は今ドラフトの1巡目リストだ。

1.マーク・アペル(21) 右投手 アストロズ
2.クリス・ブライアント(21) 三塁手 カブス
3.ジョナサン・グレイ(21) 右投手 ロッキーズ
4.コール・スチュワート(18) 右投手 ツインズ
5.クリント・フレイジャー(18) 外野手 インディアンス
6.コリン・モーラン(20) 三塁手 マーリンズ
7.トレイ・ボール(18) 左投手 レッドソックス
8.ハンター・ドージアー(21) 遊撃手  ロイヤルズ
9.オースティン・メドウズ(18) 外野手 パイレーツ
10.フィリップ・ビックフォード(17) 右投手 ブルージェイズ
11.ドミニク・スミス(17) 一塁手 メッツ
12.DJ・ピーターソン(21) 三塁手 マリナーズ
13.ハンター・レンフロー(21) 外野手 パドレス
14.リース・マグワイア(18) 捕手 パイレーツ
15.ブレイデン・シップリー(21) 右投手 ダイヤモンドバックス
16.JP・クロフォード(18) 遊撃手 フィリーズ
17.ティム・アンダーソン(20) 遊撃手 ホワイトソックス
18.クリス・アンダーソン(20) 右投手 ドジャース
19.マルコ・ゴンザレス(21) 左投手 カージナルス
20.ジョナサン・クロフォード(21) 右投手 タイガース
21.ニック・シウフォ(18) 捕手 レイズ
22.ハンター・ハーベイ(18) 右投手 オリオールズ
23.アレックス・ゴンザレス(21) 右投手 レンジャーズ
24.ビリー・マッキニー(18) 外野手 アストロズ
25.クリスチャン・アローヨ(18) 遊撃手 ジャイアンツ
26.エリック・ヘギエロ(21) 三塁手 ヤンキース
27.フィリップ・アービン(20) 外野手 レッズ
28.ロブ・カミンスキー(18) 左投手 カージナルス
29.ライン・スタネック(21) 右投手 レイズ
30.トラビス・デメリット(18) 遊撃手 レンジャーズ
31.ジェイソン・ハース(21) 右投手 ブレーブス
32.アーロン・ジャッジ(21) 外野手 ヤンキース
33.イアン・クラーキン(18) 左投手 ヤンキース

2013年6月6日木曜日

遅れてきた有望株ドモニク・ブラウン

今季若い投手たちの活躍が目立つ中で、打者にも本塁打を量産して急激に注目度が上がっている選手がいる。
フィリーズの25歳の外野手ドモニク・ブラウンだ。
彼は2006年のドラフトで20巡目(全体607位)という決して高くはない評価でフィリーズに入団する。
そこからマイナーで順調に結果を残していき、2009年にはOPS.880の活躍でマイナーでも屈指の有望株という評価を手にする。
フィリーズがハラデイをトレードで獲得する際にブルージェイズ側からブラウンを交換要員として要求されたものの断固拒否したというエピソードもあるフィリーズの”お気に入り”だった。
2010年はさらにレベルアップしマイナーで打率.327 20本塁打 17盗塁 OPS.980という活躍をみせ、有望株ランキングでもマイナー全体でトップ5に入るほどの期待度になる。
この年のオフにはジェイソン・ワースがチームを去るが、これはブラウンの台頭が予想されたことでワースの穴を埋められると考えられたからである。
これほど期待されていたブラウンだが、初のメジャーデビューイヤーとなった2010年は初本塁打こそ放ったもののその実力を出せないまま終わった。
2011年はワースが抜けたライトにブラウンが収まるかと思われていたが、思うような結果をのこせずメジャーではわずか56試合の出場に終わる。
マイナーではそれなりの好成績を残していたのだが、このあたりで彼はメジャーではあまり活躍できないタイプなのではないかという危惧もただよいだした。
そして流石にメジャーに定着しなくてはいけない2012年にもメジャーではわずか56試合の出場に終わり、マイナーでより多くの時間を過ごした。
これによって彼は忘れられた有望株となりかけていたのだ。

しかし今季、それまでの停滞感を払拭する本塁打量産体制に入っている。
ここまでの成績は59試合で打率.284 出塁率.320 18本塁打 44打点 OPS.906で、あらゆる面でキャリアハイを更新している。
18本塁打はリーグ1位で、5月にはいって始まったその勢いは未だ衰えてはいない。
四球が少ないという課題やこのペースが最後まで続く可能性は低いという問題もあるが、彼が今季大ブレイクを迎えているのは間違いないだろう。
期待されながら数年間はその力を発揮できなかった選手といえば現役ではアレックス・ゴードンがいるが、彼は今ではリーグ有数の外野手となり、特にレフトの守備はMLBでも最高峰のものになっている。
25歳にして開化したブラウンもここからリーグ有数の外野手になるのか楽しみだ。
 

2013年6月2日日曜日

岩隈久志、サイ・ヤング賞の可能性は?

今季のMLBでは日本人投手の活躍が目覚しいが、その中でも最も安定した活躍を見せているのが岩隈だ。
今季の詳しい成績と順位は以下の通りだが、岩隈のサイ・ヤング賞受賞の可能性を検証し、レースの行方を予想する。

6勝1敗(リーグ7位) 
防御率2.13(リーグ2位)
80.1回(リーグ3位)
被安打57
被本塁打10
74奪三振(リーグ7位)
13四球
WHIP 0.87(リーグ1位)
被打率 .199(リーグ9位)
被本塁打率 1.12(リーグ23位)
奪三振率 8.29(リーグ14位)
与四球率 1.46(リーグ5位)
K/BB 5.69(リーグ2位)
FIP 3.36(リーグ13位)
xFIP 3.25(リーグ10位)
tERA 2.95(リーグ4位)

これらのデータを見ると、岩隈はほとんどの分野でリーグでもトップ10に入る活躍を見せていることがわかる。
ここから岩隈の不安要素について導き出していこう。


①球威の無さと本拠地の恩恵
岩隈の平均球速は90mph前後で、これはMLBのスターターの平均にも満たない。
球速がなくても活躍する投手というのは数多くいるわけだが、球威がないと被本塁打が打たれやすくなるというのはいかんともし難い宿命だ。
同じく日本人メジャーリーガーの上原も球威がないながらも驚異的な奪三振力と制球力を誇るのは周知の通りだが、打たれるときは簡単にホームランにされてしまう。
上記のデータを見てもわかるとおり、岩隈は被本塁打に関する項目だけは好水準とは言えないレベルにある。
特に(本塁打に限らず)よく打たれているスライダーについては使い方を少し考えたほうがいいかもしれない。
しかしこれもまだ本拠地のおかげで助かってるほうだとも言える。
今季の岩隈のホーム・アウェイでの成績をそれぞれ見てみると以下のようになる。
ホーム 33.2回 防御率1.34 被本塁打2 WHIP0.59
アウェイ 46.2回 防御率2.70 被本塁打8 WHIP1.07
アウェイでも防御率はいいが、被本塁打数は跳ね上がってしまい、ランナーを出すことも多い。
昨年も同じような傾向があり、湿度が高くボールが飛びにくい本拠地の恩恵を受けているのは確実だ。
こういう部分はニュートラルな、あるいは打者有利な本拠地を持つ投手がライバルになったときには大きなマイナスポイントになってしまう。


②怪我の危険
岩隈は今季が開幕から先発ローテーションに加わったいわばフルシーズン1年目であり、中4日のローテーションを一年間守り通した経験がない。
その上元々怪我の多い投手であり、MLBではマリナーズの特別なプログラムで強化したと聞くが、やはり不安なことには変わりない。
また年間通した場合のスタミナが持つのかどうかという部分も気になる点だ。
ある程度慎重な起用を受けてはいるものの、とにかく夏場は正念場になるだろう。
他のサイ・ヤング賞候補と比べて経験の少なさが予測を難しくしている。



③強力なライバル
岩隈自身の問題は上記の被本塁打と本拠地についてのみだが、今季は強力なライバルが同じリーグにいる。
それは当然今季大ブレイクしているクレイ・バックホルツだ。
簡単な成績だけピックアップすると

7勝0敗(リーグ2位)
防御率1.73(リーグ1位)
72.2回(リーグ11位)
被安打49
被本塁打2
73奪三振(リーグ8位)
27四球
WHIP1.05(リーグ6位)

制球に関しては岩隈が圧倒しているものの、打たれないということと打線の援護ではバックホルツが上回っている。
もちろんこのまま防御率1点台で無敗のままなんて簡単に行くことはまずないが、もし岩隈とバックホルツが同程度の成績で並んだ時は、①の本拠地の恩恵というものが影響してくるはずだ。
バックホルツはホーム防御率が2.01でアウェイ防御率が1.29だが、彼はどちらかというと打者有利なフェンウェイパークを本拠地にしている。
そのため成績に大きな差がなければ間違いなくバックホルツの評価が高くなるだろう。
これに関してはダルビッシュや黒田がライバルとなったときも同じことが言える。
ヒッターズパークを本拠地にする彼らは、好成績を残せば数字以上の評価を得るだろう。
また同僚のヘルナンデスがライバルになる可能性も高く、その場合は同じチームということで岩隈もかなり比較されるはずだ。


以上の3点が岩隈の不安要素になるが、実際に受賞できる可能性はそれなりにはあるのではないかと思う。
現在候補1番手がバックホルツであることは間違いないが、今の岩隈はレースの2,3番手にはつけているはずだ。
個人的にはヘルナンデス受賞の可能性が高いだろうと予想している。