2014年11月29日土曜日

ジョシュ・ドナルドソンがブルージェイズへ電撃移籍

アメリカにはブラックフライデーというものがあるのをご存知だろうか。
サンクスギビング翌日の金曜日のことをそう呼ぶのだが、この日は多くの商品がセールになる一年で最も買い物が行われる日の一つであり、クリスマス商戦の始まりの日でもある。
そんなブラックフライデーの晩に、アスレチックス、ブルージェイズ間でビッグトレードが成立した。
アスレチックスから移籍したのは今やMLB有数の三塁手ジョシュ・ドナルドソン、そしてブルージェイズからはジェド・ロウリー、ショーン・ノーリン、ケンドール・グレイブマン、フランクリン・バレトの4選手が動いた。
1対4というトッププロスペクトを含む大きなトレードとなったわけだが、実際今のドナルドソンにはそれだけの価値がある。
今季はWARにおいて三塁手最高値を記録、長打力、出塁力など攻撃面での評価ももちろん高いがそれほどWARが高くなった原因は守備力の高さにある。
近年の守備を見ている限りそれはフロックではなくしっかりとした実力だろう。
ブルージェイズが彼を欲しがった背景はそこにあるはずだ。
今季のブルージェイズは三塁手を固定できず、プロスペクトとして期待されたロウリーもまたしても期待を裏切る結果となった。
ジェイズの内野守備は強固とは言い難いため、攻守両面で高い貢献度を誇るドナルドソンを欲したのはうなずける。
では逆にアスレチックスは主力を放出して来季を捨てたのかというとそういうわけではない。
トレードで獲得したロウリーは期待こそ裏切ってはいるものの守備には定評があり、今季は70試合で12本塁打と長打力開花の可能性も垣間見せた。
アスレチックスとしてはいつも通りの低年齢化を図ったということだろう。
またもう一つの意図としてマイナーの枯渇を防ぐ狙いもあるはずだ。
今季はシーズン中にレスター、サマージャを獲得するために2つのトレードでプロスペクトを放出しており、その穴埋めはしなければいけない状況でもあった。
今トレードで獲得した選手は最高級ではないもののそれなりに期待されている将来の戦力だ。
ラッセル・マーティンも獲得し来季こそ優勝争いに顔を出したいブルージェイズと、将来性を買ったアスレチックス。
どちらがブラックフライデーでの”お得”な買い物ができたのか来季が楽しみだ。

2014年11月27日木曜日

新たなキューバの星ヤスマニ・トーマスがダイヤモンドバックス入り

ダイヤモンドバックスがキューバ出身の外野手ヤスマニ・トーマス(24)との6年6850万ドルの契約に合意した。
トーマスは2013年にWBCキューバ代表としてもプレーした選手で、今オフのFA市場ではトップ10に入る注目度があった。
近年キューバ出身選手の多くがMLBで大活躍し印象づけている。
世界最速の豪球左腕アロルディス・チャプマン、2年連続ホームランダービー優勝のヨエニス・セスペデス、昨季大旋風を巻き起こしたヤシエル・プイグとホゼ・フェルナンデス、そして今季新人王のホゼ・アブレイユなどだ。
そのため各チームが躍起になってキューバ出身選手獲得を狙っており、今季のその最有力候補がトーマスだったわけだ。
2008年からキューバリーグでプレーし始めた彼は、残念ながら上記の選手たちのように華々しいリーグでの経歴を持つわけではない。
キューバでは通算で205試合30本塁打104打点と、強打者ではあるがあまり大きなインパクトはない数字だ。
実際彼が今季いきなりアブレイユのようになると考えている識者はほとんどいないし、将来的にも彼ほどの打者になるとも考えられていない。
外野手としても守備力は肩、足とともに平均的で飛び抜けていない。
ただ確かなのは彼には高く評価されているパワーのポテンシャルがあるということ。
そのパワーを試合で発揮できるかはまた別の話であるが、ポテンシャルパワーヒッターにとってダイヤモンドバックスというのは決して悪くない選択だろう。
今回の契約もうまくいけばバーゲン価格になる可能性もあり、年齢的にもゴールドシュミット、トランボ、トーマスと若くパワーのある選手がそろったのはダイヤモンドバックスファンにとっては朗報だ。
とりあえずはトランボとの兼ね合いで左翼か右翼どちらかでプレーすることになるだろうが、もし彼がプイグのようになり強打のクリーンアップとして活躍することができれば今季最下位に終わったダイヤモンドバックスの大きな希望となるだろう。


2014年11月26日水曜日

レッドソックスが大型補強敢行

今季苦しんだレッドソックスが、FA市場を席巻する勢いで大型補強に乗り出した。
ジャイアンツからFAになっていたパブロ・サンドバル(28)と5年9500万ドル、ドジャースからFAになっていたハンリー・ラミレス(31)と5年1億1000万ドル(5年目は2200万ドルのオプション)で契約し、今季のFA市場の有力内野手2人を手に入れた。
まずサンドバルについてだが、パンダの愛称で親しまれる三塁手で体型に似合わぬ俊敏な守備とうまさを感じさせる打撃に定評がある。
パワーヒッターに見えるが20本塁打を超えたのは2度だけで、離脱も多いため100打点に到達したこともない。
もう一つ明確な弱点、あるいは持ち味と言い換えることもできるのはフリースインガーというスタイル。
四球をあまり選ばずどんどん振っていく近年あまり評価されなくなってきたタイプだ。
ここまで聞くとあまりいい選手には思えないが、彼が今回これほどの契約を手に入れた理由は2つある。
一つ目は当然年齢。
28歳というのはFA市場に出てくる中では比較的若く、長期契約のリスクも小さくすむ。
もう一つはポストシーズンでの活躍ぶりだ。
2012年と2014年の2度のポストシーズンにおいて彼は非常に高いパフォーマンスでチームを優勝に導いている。
大舞台の経験が豊富な若い選手は貴重であり、レッドソックスのようなチームにはそういう選手が必要だ。
また、本拠地がフェンウェイパークになることで彼の成績向上自体も計算の内にいれているというのもあるだろう。
彼は実は打者に不利なホームでの方がよく打っていたタイプだが、形状が特殊なフェンウェイではまた違った活躍ができるはずだ。
そのあたりも汲んでの5年1億ドル違い大型契約、彼がボストンで人気者になるのは間違いないがそれだけでなくチームをプレーオフに導くことができるだろうか。

ラミレスの方は語るまでもないスター選手、いや元スター選手といった方がいいだろうか。
マーリンズ時代はオールスターの常連だったが近年は怪我も多くそういったものから遠ざかっている。
2013年こそ獅子奮迅の活躍で復活を印象付けたが、今季はまた少しグレードが下がってしまった。
それでも並の選手と比べると大きく上回る攻撃力があるのは間違いなく、実績、実力を考えれば妥当な契約内容だろう。
気になるのは怪我がちなことと守備面での貢献度、あとは性格面だろう。
彼のようなアクの強い選手をコントロールするにはチームメイトや監督の尽力が必要になる上、レッドソックスには若手のボガーツが遊撃におり三塁手としてサンドバルも獲得したため守備位置も外野に転向する可能性が高い。
その点もちろん納得した上での契約合意だろうが、その奔放さが裏目に出ないことを祈りたい。

2014年11月18日火曜日

スタントンが史上最高額3億2500万ドルのメガディールに合意

近年年俸が上がり続け1億ドル超えの超大型契約を珍しくなくなったが、今回その記録が更新されることとなった。
25歳の若き大砲ジャンカルロ・スタントンがなんと13年3億2500万ドルというとんでもない契約に合意したのだ。
今までは10年が最長だったが、年数、総額ともに史上最高額を記録することとなった。
驚きを隠せないこの契約だが、個人的にはこれだけの契約をしたのだからマーリンズには本腰を入れて黄金時代を作り上げていってもらいたいと思う。
以前マーリンズが再びファイアーセールに走った際にスタントンはチームに対する不信感をあらわにしたが、再びそのような愚行に走ることはもう許されないだろう。
若き戦力が充実しつつあるマーリンズは、もう後は前に向かって突き進むだけだ。

オフシーズンの本格開幕を印象付ける3つのビッグディール

日米野球の最中だが、オフシーズンはすでに開幕しており、それを印象付けるビッグディールがいくつか発表された。

まずは有力FA候補だったビクター・マルチネスの去就。
打撃だけならMVPを獲得したトラウトを凌ぐ活躍ぶりだったが36歳と年齢的に長期契約には大きなリスクがある選手だった。
それでも打線の弱体化を避けたいタイガースはリスクを承知で彼と4年6800万ドルという大型契約を結んだ。
来季いきなり成績が落ち大損する可能性もあるが、それでも打力が欲しかったということなのだろう。
同じくFAになっているエースのシャーザーの去就に対する影響もきになるところである。

続いての大型契約はラッセル・マーティン。
今オフ最高の捕手で31歳の彼はブルージェイズと5年8200万ドルという大型契約を結んだ。
今季はキャリアハイの出塁率を残すなど近年低迷気味だった打撃を信頼度の高いレベルにまで戻したことが大きく、守備に定評があるタイプのためリーダーシップのあるベテランを欲していたブルージェイズの条件にマッチしていたのだろう。
個人的には高すぎるとは思うが、守備も打撃もある程度のレベルでそろった捕手は貴重なのでその点は仕方ないか。

そして最も大きな驚きとなったのはカージナルス、ブレーブス間でのトレード。
ブレーブスからはジェイソン・ヘイワードとジョーダン・ウォルデンが、カージナルスからはシェルビー・ミラーとティレル・ジェンキンスがそれぞれ放出された。
ヘイワードは言うまでもないブレーブスのスター選手の一人であり、彼の放出は大きな驚きであるが彼ほど重要な存在を放出してもなおブレーブスは若い好投手が欲しかったようだ。
獲得したミラーは昨季ブレーブスのエース、テヘランと新人王を争った本格派投手であり、ジェンキンスは2010年ドラフト1巡目の22歳だ。
うまく成長すれば数年間かなり強力なローテーションを維持することができるようになるだろう。
逆にカージナルスとしては今プレーオフ中に外野の一角を任せる予定だったタベラスが亡くなったために新たな外野手を必要としていたためその目論見が合致したということだろう。
若い選手4人という少し珍しいトレードであった。

2014年11月16日日曜日

2014年MVP

マイク・トラウト(エンジェルス)
157試合 打率.287 39二塁打 36本塁打 111打点 出塁率.377 OPS.939 16盗塁

過去2年MVP級の成績を残しながらミゲル・カブレラに阻まれてきたが、3度目の正直でついに最高の栄誉を得ることに成功した。
本塁打、打点こそキャリアハイの数値を残し打点王も獲得した一方、184三振や打率3割を切るなど粗さにも磨きがかかってしまった。
盗塁も長打力の増加で企図数が減り、全てにおいてキャリアハイとはいかなかった。
それでも周りを全く寄せ付けない満票受賞となり、23歳にしてこれで名実ともにMLB最高の選手となったわけだ。
これからも改善すべき点はいくつもあるが、これはおそらく今後何度もMVPを受賞する活躍をみせ殿堂入りするであろうトラウトの最初の一歩となることだろう。



クレイトン・カーショウ(ドジャース)
27試合 21勝3敗 防御率1.77 198.1回 239奪三振 31四球 9被本塁打 WHIP0.86

投手にMVPはふさわしいのか。
この議題は何度も噴出してきたものであり、様々な意見が今でも見られる。
近年ではジャスティン・バーランダーが2011年に投手三冠王を獲得し受賞したが、先発投手がMVPを獲得したのは25年ぶりとなり、歴史的な受賞だった。
しかしナ・リーグの方はもっと根が深く、最後に投手がMVPを受賞したのは1968年のことだ。
しかし今回カーショウがその呪縛を約半世紀ぶりに打ち破った。
もちろん満票ではなく票はある程度ばらけたが、それでも彼の投球は歴史的と称してよいものだと多くの投票者が認めたということだろう。
バーランダーの時とは違い、カーショウは投手三冠を制したわけではなく、タイトルも最多勝しか獲得していないが、それでも多くの識者をうならせたあたりに彼がどれだけ飛び抜けた存在なのかがうかがえる。
史上11人目のMVP、サイ・ヤング賞の同時受賞となったわけだが、まだ26歳の彼は年齢的にはこれから全盛期に入るところ。
またいつか歴史を塗り替えるような大きなことを成し遂げるのか、歴史的投手のこれからのパフォーマンスに大いに期待しよう。


2014年11月13日木曜日

2014年サイ・ヤング賞

2014年サイ・ヤング賞が発表され、コリー・クルーバーとクレイトン・カーショウがそれぞれ受賞した。


コリー・クルーバー(インディアンス)
34試合 18勝9敗 防御率2.44 235.2回 269奪三振 51四球 14被本塁打 WHIP1.09

28歳にして初受賞となったクルーバーだが、昨季までは規定投球回に到達したこともなく全国的に無名に近い存在だった。
しかし内容的には初の2桁勝利をあげた昨季も優れたもので、まさに知る人ぞ知るブレイク候補だったと言えるだろう。
それでもこれほどのブレイクを予想したファンは皆無だろうというブレイクぶりで、最多勝のタイトルに加え奪三振2位、防御率3位、投球回3位と主要カテゴリにおいて全く穴のない数字を叩き出した。
彼は今回1位票を17集め、1位票が13だったヘルナンデスを見事にかわした。
防御率、被打率、WHIPなどが1位だったヘルナンデスは勝ち数の差が影響してしまったようだ。
今季は彼のキャリアにおいて最高のパフォーマンスではあっただけに残念だが、彼の年齢や実力を考えると今後もチャンスは大いにあるだろう。



クレイトン・カーショウ(ドジャース)
27試合 21勝3敗 防御率1.77 198.1回 239奪三振 31四球 9被本塁打 WHIP0.86

カーショウは満票での選出となり、これでサイ・ヤング賞3度はドジャースのレジェンドであるサンディ・コーファックスと並んだことにになる。
防御率、勝利数、WHIP、完投数などで1位だったカーショウだが序盤の怪我の影響もありり200回に届かなかったことが危ぶまれていた。
しかし蓋を開けてみれば例年なら受賞してもおかしくない成績を残したクエトを寄せ付けずの満票受賞。
投手から1人だけMVPファイナリストに選ばれた時点で結果は見えていたが、やはり防御率1.77に加え21勝という数字はとてつもないものだ。
ここ4年で3度のサイ・ヤング賞、受賞できなかった年もサイ・ヤング賞級の成績を残したカーショウは今まさにMLB最高の投手であると言って間違いない。
まだ26歳の彼がこれからどれほどの活躍ぶりを見せていくのか非常に楽しみだ。


 

2014年11月11日火曜日

2014年MLB新人王

2014年に新人王が発表され、ア・リーグはホゼ・アブレイユ(ホワイトソックス)が、ナ・リーグはジェイコブ・デグローム(メッツ)がそれぞれ受賞した。
アブレイユは満票、デグロームは1位票を30人中26人から受けての受賞だった。

ホゼ・アブレイユ




ジェイコブ・デグローム


2014年11月8日土曜日

日米野球来日ロースター決定

来日する29人のメジャーリーガー達が決定した。
ベストには程遠いメンバーであることは間違いないが、カノー、プイグ、アルトゥーベ、ロンゴリアなどのスター選手も少なからずおり、MLBに興味のあるファンにはなかなか興味深いシリーズになるのではないだろうか。

投手
岩隈久志(マリナーズ)
ジェレミー・ガスリー(ロイヤルズ)
マット・シューメイカー(エンジェルス)
ヘクター・サンティアゴ(エンジェルス)
和田毅(カブス)
フランクリン・モラレス(FA)
クリス・カプアーノ(FA)
ジェフ・ベリヴ(レイズ)
ジェリー・ブレビンス(ナショナルズ)
ランディ・チョート(カージナルス)
ロブ・ウッテン(ブルワーズ)
ホゼ・ベラス(アストロズ)
トミー・ハンター(オリオールズ)
マーク・メランソン(パイレーツ)

捕手
サルバドール・ペレス(ロイヤルズ)
エリック・クラッツ(ロイヤルズ)
ドリュー・ブーテラ(ドジャース)

内野手
カルロス・サンタナ(インディアンス)
ジャスティン・モーノー(ロッキーズ)
ホゼ・アルトゥーベ(アストロズ)
ロビンソン・カノー(マリナーズ)
エバン・ロンゴリア(レイズ)
アルシデス・エスコバー(ロイヤルズ)
エドゥアルド・ヌニェス(ツインズ)

外野手
ヤシエル・プイグ(ドジャース)
デクスター・ファウラー(アストロズ)

内野手/外野手
クリス・カーター(アストロズ)
ルーカス・デューダ(メッツ)
ベン・ゾブリスト(レイズ)


まず投手についてだが、酷いの一言。
一流と言える投手は岩隈とメランソンくらいしか見当たらず、MLBベストメンバーを組むならこの選手らは誰も入ることはないであろうメンツだ。
しかし野手の方はそれなりの選手が集まっている。
私がラインナップを組むとしたら以下のようになるだろうか。

1 DH ホゼ・アルトゥーベ
2 CF ヤシエル・プイグ
3 2B ロビンソン・カノー
4 3B エバン・ロンゴリア
5 1B カルロス・サンタナ
6 RF ベン・ゾブリスト
7 LF クリス・カーター
8 C サルバドール・ペレス
9 SS アルシデス・エスコバー

これだけ見れば絶対的な破壊力には欠けるものの、かなり面白みはあるのではないだろうか。
少なくとも1番から4番まではオールスター級の野手が揃っている。
問題はこのメンバーがしっかりかみ合うかどうかと、コンディションやモチベーションなどだ。
日本のチームはこのチーム相手にどこまでやれるのか非常に楽しみである。

2014年11月7日金曜日

2014年シルバースラッガー賞 ハンクアーロン賞

シルバースラッガー

”ア・リーグ”

C  ヤン・ゴームス(インディアンス)
1B ホゼ・アブレイユ(ホワイトソックス)
2B ホゼ・アルトゥーベ(アストロズ)
3B エイドリアン・ベルトレ(レンジャーズ)
SS アレクセイ・ラミレス(ホワイトソックス)
OF マイク・トラウト(エンジェルス)
OF マイケル・ブラントリー(インディアンス)
OF ホゼ・バティスタ(ブルージェイズ)
DH ビクター・マルチネス(タイガース)

”ナ・リーグ”

C  バスター・ポージー(ジャイアンツ)
1B エイドリアン・ゴンザレス(ドジャース)
2B ニール・ウォーカー(パイレーツ)
3B アンソニー・レンドン(ナショナルズ)
SS イアン・デズモンド(ナショナルズ)
OF ジャスティン・アップトン(ブレーブス)
OF アンドリュー・マッカッチェン(パイレーツ)
OF ジャンカルロ・スタントン(マーリンズ)
P  マディソン・バンガーナー(ジャイアンツ)


ハンク・アーロン賞

”ア・リーグ”
マイク・トラウト

”ナ・リーグ”
ジャンカルロ・スタントン


サイ・ヤング賞、MVPなどと比べると大きく話題になることは少ないこの2つの賞だが、野手によっては非常に栄誉あるもの。
両ともに攻撃力のみを評価したもので、トラウトはシルバースラッガーは3年連続の受賞だがハンク・アーロン賞は初めて、スタントンは両賞ともに初の受賞となった。
25歳以下のこの二人が受賞したことは、若い野手の台頭を表しており、ある意味世代交代の始まりとも言えるのかもしれない。




2014年11月6日木曜日

新人王ファイナリスト6名

新人王のファイナリストが各リーグ3名ずつ選出された。
残念ながら田中将大はファイナリストに残ることはできなかったが、来季以降今度はサイ・ヤング賞争いに顔を出すことを期待しよう。

”ア・リーグ”

ホゼ・アブレイユ(27)
145試合 打率.317 35二塁打 36本塁打 107打点 出塁率.383 OPS.964 3盗塁

キューバからやってきた最高級の打者。
打撃成績は新人という枠からかけ離れたものでほとんど文句なし。
数字だけで考えるなら彼が新人王を獲得するのに最もふさわしい。
問題はキューバリーグでの経歴を持つ彼を果たして新人と定義していいのか。
これは日本人選手にも同じことが言えるが、規制するルールがない以上とりあえず今回はアブレイユが高い確率で受賞することになるだろう。


デリン・ベタンセス(26)
70試合 5勝0敗 1セーブ 22ホールド 防御率1.40 90.0回 135奪三振 24四球 4被本塁打 WHIP0.78

メジャーデビューは2011年だったため年齢的には新人離れしているがメジャーではこれまで数イニングしか投げておらず、今季が実質的な初年度。
元々は先発として期待されていたがうまくいかず、今季はリリーフ専任にしたところかなりの好成績を残した。
非常に質の高い投球でチームに大きく貢献し、特にリリーフ専任ながら90回を投げたあたりかなりの労働量であるが、役割がセットアッパーにとどまったためセーブ数などの派手な数字がないのが惜しい。


マット・シューメイカー(28)
27試合 16勝4敗 防御率3.04 136.0回 124奪三振 24四球 14被本塁打 WHIP1.07

遅咲きの投手で昨季終盤にメジャーデビューし、今季が実質的なルーキーイヤーとなった。
マイナーではいい成績とは言い難いがメジャーで何かがはまったのか好投を続けあれよあれよと16勝をあげた。
規定投球回には届いていないが、内容的にも素晴らしく特に制球力はかなりハイレベルだ。
これが実力なのかどうかは今後見ていかなければわからないが、少なくとも今季の成績は新人としてはかなり素晴らしい部類に入る。


今回のア・リーグ新人王ファイナリストは全体的に高齢で、もしここに田中が入っていたとしてもそれは変わらない。
数字だけ見れば圧倒的なのはもちろんアブレイユだが、もし彼が選ばれればイチロー以来の他国トップリーグ経験者の受賞となる。
近年は毎年のように有力候補に日本人、キューバ人、韓国人といった他国リーグ経験者が入ってきたが、いざ選ばれればこれがなんらかの変化のきっかけになるかもしれない。
少なくとも日本、キューバ、韓国のようにある程度レベルの高いリーグを持つ国で実績がある選手は規制する必要は今後出てくるだろうと私は思う。


”ナ・リーグ”

ジェイコブ・デグローム(26)
22試合 9勝6敗 防御率2.69 140.1回 144奪三振 43四球 7被本塁打 WHIP1.14

2010年にドラフトで入団すると1年の全休などの壁に当たりながらもしっかり段階を踏んで今季のメジャーデビューまでたどり着いた。
序盤は制球難にも悩まされていたが終盤に入るにつれ洗練されていき、9月には試合開始から8人連続奪三振というタイ記録まで樹立してみせた。
規定投球回にも10勝にも届いていないあたり色々と惜しいが、かなり優秀な成績だと言える。


ビリー・ハミルトン(24)
152試合 打率.250 25二塁打 6本塁打 48打点 出塁率.292 OPS.648 56盗塁

大きな期待とともに今シーズンを迎えた彼だが、盗塁こそリーグ2位に入ったものの彼のパフォーマンスに失望したファンも多いだろう。
それくらい彼への期待度は大きかったからだ。
元々それほど安定感があったわけではない打撃の方で苦しみ、肝心の盗塁もデータ不足が原因か23もの盗塁死を記録している。
盗塁の最大のコツは塁に出ることとはよく言ったもので、今後は打撃面での進化が期待される。
ただ守備面では自慢の足を活かした広い守備範囲など貢献度が高く、打撃× 守備⚪︎ 走塁△というシーズンだったように思う。


コルテン・ウォン(24)
113試合 打率.249 14二塁打 12本塁打 42打点 出塁率.292 OPS.680 20盗塁

デビューしたばかりの昨季の散々なパフォーマンスからはかなり改善されたが、やはり成績的に飛び抜けた点がないのが痛い。
守備・走塁でのパフォーマンスは優れたものだったが、いくら二塁手とは言え打撃力がやはり大きな課題だ。
プレーオフで見せたように意外にもパンチ力はあり、出塁力があがれば将来性は感じさせるが、今季に関しては新人王受賞の可能性はないだろう。


ナ・リーグは大いに期待されたハミルトンと伏兵デグロームの一騎打ちという形になるが、個人的にはフルシーズンしっかり試合に出て好守備も披露し続けたハミルトンに軍配があがるのではないかと思う。
デグロームは記録も含めかなりのハイパフォーマンスだったことは確かだが、やはり10勝に届いていないあたりが響くのではないだろうか。
とは言えどちらが受賞しても個人的には文句がない戦いだ。


2014年ゴールドグラブ賞

今季のゴールドグラブ賞が発表された。

ア・リーグ

C  サルバドール・ペレス(ロイヤルズ) 2年連続2回目
1B エリック・ホズマー(ロイヤルズ) 2年連続2回目
2B ダスティン・ペドロイア(レッドソックス) 2年連続4回目
3B カイル・シーガー(マリナーズ) 初
SS JJ・ハーディ(オリオールズ) 3年連続3回目
LF アレックス・ゴードン(ロイヤルズ) 4年連続4回目
CF アダム・ジョーンズ(オリオールズ) 3年連続4回目
RF ニック・マーケイキス(オリオールズ) 3年ぶり2回目
P  ダラス・カイコ(アストロズ) 初


ナ・リーグ

C  ヤディアー・モリーナ(カージナルス) 7年連続7回目
1B エイドリアン・ゴンザレス(ドジャース) 3年ぶり4回目
2B DJ・ラメイヒュー(ロッキーズ) 初
3B ノーラン・アレナード(ロッキーズ) 2年連続2回目
SS アンドレルトン・シモンズ(ブレーブス) 2年連続2回目
LF クリスチャン・イェリッチ(マーリンズ) 初
CF フアン・ラガーレス(メッツ) 初
RF ジェイソン・ヘイワード(ブレーブス) 2年ぶり2回目
P  ザック・グレインキー(ドジャース) 初


ワールドチャンピオンのジャイアンツからは誰も選出されなかったが、ア・リーグチャンピオンのロイヤルズからは3人、しかも2年連続で同じ顔ぶれの選手となった。
またオリオールズも3選手選出されており、堅守の印象のあるオリオールズとロイヤルズが大勢を占めている。
ナ・リーグの方はモリーナが7年連続と相変わらずの強さを見せたが、初受賞が4人出るなど多少ばらけた印象もある。

さて、このゴールドグラブ賞だが、日本のゴールデングラブ賞と同様正確に守備力を示しているかには関しては疑問を呈されることが多い。
過去に物議を醸した例を挙げるなら今季引退したレジェンドであるジーターが代表的だろう。
その華やかな守備とキャプテンシーから守備のいい印象があり、5度ものGG賞を獲得しているが実際には彼がその年一番守備力の高い遊撃手だったことはなく、むしろ平均以下の守備を披露している年も多かった。
何故そういったことがわかるかと言うと、近年打撃だけではなく守備も数値化することが可能になりつつあるからだ。
例えばDRSやUZRといったものが代表的で、数値がプラスなら平均以上、マイナスなら平均以下ということがわかる。
ある程度正確にその選手の守備力を定義するためには統計である以上一定量のサンプルが必要になり、3年間分のデータが必要とされているが、発展途上の指標である以上このあたりは仕方ないだろう。
もちろんこういったなんでも数値化してしまえという風潮に疑問を呈することもなくはないが、ファンや識者がその選手のすべてのプレーを見るのは無理があるため、本当にその選手の守備力がチームに貢献できるようなものなのかを測るにはこういった指標は完璧ではなくても有用なのだと私は思う。

ここでGG賞の方に話を戻すが、この賞はデータに基づいたものではなく、あくまで印象によるもの(明らかに打撃成績も加味されているなど)なので、多少不可思議な選手がなされることがよくある。
例えば今回の選手をDRS基準で見ると以下のようになる。

C  ペレス+8 モリーナ+8
1B ホズマー+3 ゴンザレス+12
2B ペドロイア+17 ラメイヒュー+16
3B シーガー+10 アレナード+16
SS ハーディ+10 シモンズ+28
LF ゴードン+27 イェリッチ+13
CF ジョーンズ+2 ラガーレス+28
RF マーケイキス+1 ヘイワード+32
P  カイコ+10 グレインキー+5

DRSがマイナス値を示した選手が選出されていない点は大きな前進だと言えるが、例えばホズマー、シーガー、ジョーンズあたりは他にもっと高い数値を示した選手がおり、ホズマーに関してはUZRはマイナスを示していた。
またジョーンズはここ数年印象で選ばれている感が最も強い選手であり、レオニス・マーティンなどはDRS、UZR、捕殺などで大きくジョーンズを上回っているにもかかわらず受賞できていない。
守備率もほぼ同じため、やはり打撃や印象でジョーンズが選出されたのではないかと思ってしまう。
印象というのは重要なものであるため否定するつもりはないが、そのために本当に実力のある守備職人が日の目を見ないならまた話も変わってくるだろう。

守備職人と言えば、今回よほどのMLBファンでないとわからない名前が一つでているはずだ。
それがフアン・ラガーレスだ。
ドミニカ出身の25歳で昨年デビューしたばかりの彼は打撃に特筆すべき点はほとんどないものの守備力は既にMLB最高レベル。
守備範囲や肩などで数々のファインプレーを演出する守備の達人だ。
打撃は平均以下、守備はMLB最高、そういう選手が好みの方は是非彼を追いかけてみてはいかがだろうか。






2014年11月3日月曜日

オフシーズン開幕 有力FA候補紹介

ワールドシリーズが終了したが、これからは野球ファンにとって別の楽しみが始まる。
そう、補強だ。
そこで今回は今オフの有力FA候補選手たちを紹介したいと思う。

1. マックス・シャーザー(30)
33試合 18勝5敗 防御率3.15 220.1回 252奪三振 63四球 18被本塁打 WHIP1.18

今オフ一番の注目選手になるのは間違いない。
ここ2年連続で最多勝、2013年にはサイ・ヤング賞のリーグ屈指の本格派投手であり、獲得したチームがどこであれエース格になるのは確実だ。
タイガースとしてももちろん再契約したいところだが、長期契約を結んだバーランダーが成績急降下気味であることを考えると30歳の投手との超大型契約は怖いだろう。
もちろんそれは他のチームにとっても同じ、とは言え資金力のあるチームは争奪戦に参加し、その結果かなり大型の契約になるはずだ。
7年1億6000万前後の契約になると予想しているが代理人がボラスなだけにどうなるか予想がつかない。


2. ジョン・レスター(30)
32試合 16勝11敗 防御率2.46 219.2回 220奪三振 48四球 16被本塁打 WHIP1.10

右の注目投手がシャーザーなら左はレスター。
タイトル獲得経験こそないが今季の成績は圧巻で、またワールドシリーズに非常に強い投手として知られている。
エース格投手ではあるがやはりこちらも30歳という年齢がネックになりそうだ。
ただしレスターはシーズン途中でトレード移籍したため、FAで獲得しても補償としてドラフト指名権を失うことがないのが大きなメリットになる。
古巣のレッドソックスはもちろん、レスターの故郷であるシアトルのマリナーズなども興味を示している。


3. ハンリー・ラミレス(30)
128試合 打率.283 35二塁打 13本塁打 71打点 出塁率.369 OPS.817 14盗塁

打撃力に関してはトップクラスだと考えて間違いない。
遊撃手でこれほどの打撃力を持つ選手は滅多に出てこず、また移籍先の環境によってはフル出場して3割20本20盗塁も現実的だろう。
ただネガティブな点も数多くある。
まず健康面だが、この4年間で500打数に到達したのは1年しかなく、毎年何かしら怪我で離脱する印象だ。
ポジション面でも今後のことも考えれば遊撃手と三塁手どちらを優先的に守っているのかは問題になる。
身体能力は高くとも守備力が高い選手ではないため、三塁手にしぼっていくのがいいのだろうが彼がそれに納得するかどうかだ。
トラブルメーカーとしての一面もあり、この年齢から5年以上の長期契約というのは少し危険な匂いもする。


4. ジェームズ・シールズ(32)
34試合 14勝8敗 防御率3.21 227.0回 180奪三振 44四球 23被本塁打 WHIP1.18

8年連続200回のMLB屈指のワークホース。
それもただ投げるだけではなくしっかりエース級の数字を残す安定感のある投手だ。
近年は奪三振率が低下するなど衰えの兆候は見せているものの、高い制球力を軸にした技術力の高い投手だけに、今後も息の長い活躍をしていく可能性は高い。
ただ年齢的に6年以上の超大型契約にはなりそうにない。
5年1億ドル前後が目安になるだろうか。


5. ビクター・マルチネス(35)
151試合 打率.335 33二塁打 32本塁打 103打点 出塁率.409 OPS.974 3盗塁

35歳にしてキャリハイの数字を叩きだした。
故障で全休した2012年を除いて5年連続で3割を記録しており、今季もわずか42三振というその脅威のバットコントロール力からも実力がうかがえる。
ただし打率に関しては信頼がおけても長打力は一過性のものと考えて慎重になるべきだろう。
DHが基本だが一塁手起用もあり得るため、ナ・リーグでも活躍の可能性はある。
本来なら1年契約で様子を見たいところだが3年契約あたりで落ち着くことになるだろう。


6. ネルソン・クルーズ(34)
159試合 打率.271 32二塁打 40本塁打 108打点 出塁率.333 OPS.859 4盗塁

こちらも34歳にしてキャリハイの数字を記録し、初の本塁打王にも輝いた。
健康面の不安が大きい選手だがDHでの出場機会が多かったこともこの活躍ぶりに一役買っているだろう。
ただ基本的には粗さのあるタイプで、過去の薬物使用歴なども手伝って大きな契約は地雷になる可能性が高い。
3年契約前後が基本線になるだろう。


7. パブロ・サンドバル(28)
157試合 打率.279 26二塁打 16本塁打 73打点 出塁率.324 OPS.739 0盗塁

今季ジャイアンツのワールドシリーズ制覇に大きく貢献したサンドバル。
このポストシーズンでの活躍ぶりはかなり印象深いものになったのではないだろうか。
そのキャラクターと見た目からは想像がつかない敏捷な守備などで人気もある彼は、優秀な選手であることは間違いないが選手としての粗も大きい。
気になるのは健康面とフリースウィンガーであること。
2009年ほど打てればそれも気にならないがここ数年の成績低下を見る限り長期契約はかなりリスキーだ。
今季のFA市場では比較的若いが長期大型契約を取ることができるかは少々疑問だ。


8. ラッセル・マーティン(31)
111試合 打率.290 20二塁打 11本塁打 67打点 出塁率.402 OPS.832 4盗塁

過去3年は低打率のパワーヒッターという感じだったが今季は長打率が落ちたかわりに打撃の質は向上。
捕手としてはかなり高い打撃貢献度を見せていた。
しかもそれだけではなく彼は守備面での貢献度も非常に高く、パイレーツのここ2年の躍進の影の立役者でもある。
今オフのFA市場ではトップの捕手であり、絶対的捕手がいないチームはどこも欲しがるだろう。


9. メルキー・カブレラ(30)
139試合 打率.301 35二塁打 16本塁打 73打点 出塁率.351 OPS.808 6盗塁

打撃面ではすべてにおいて平均以上という感じの外野手。
年齢的にも怪我さえなければ今季と同等の成績を今後数年残していくことができるだろう。
しかし過去の薬物歴やここ数年の怪我の多さを考えれば少なくとも一流クラスの大型契約を得ることはできないだろう。


10. フランシスコ・リリアーノ(31)
29試合 7勝10敗 防御率3.38 161.1回 175奪三振 81四球 13被本塁打 WHIP1.30

2度カムバック賞を獲得している不死鳥のような投手。
逆を言えば年ごとの成績に大きな差があるということでもある。
しかしパイレーツに来てからのこの2年のパフォーマンスは、相変わらずの制球難とは言え質は高いものだった。
故障することも少なくなく200回には一度も到達したことがないため、非常に評価に困る投手ではあるのだが、契約内容次第では欲しがるチームは多いだろう。