2014年5月10日土曜日

ダルビッシュ、またしてもあと一人に泣く

昨季のダルビッシュと言えば最も印象深いのがレギュラーシーズン最初の登板だ。
弱小アストロズを手玉に取り9回2アウトまで完全試合を演じてみせたが、最後の1人にヒットを打たれ、球数も多かったことでそこで交代し完全試合だけでなく初完封すらも逃してしまったのだ。
そして今日の登板でも彼はほとんど同じような”パフォーマンス”を披露してくれた。
相手は強力なレッドソックス打線、しかも相手投手は昨季中盤までサイ・ヤング賞争いもしていたバックホルツだったがレンジャーズ打線は初回から好調ですぐに先制し5回で8点のリードを作ってみせた。
ダルビッシュも打線の援護に応えるように完全に抑えていたが、7回2アウトでオルティズを迎え、フライになった打球はライトとセカンドの間に落ちた。
万事休すかと思われたが、これライトのエラーと判断され完全試合は消えたもののノーヒットノーランの可能性は潰えることなく、2つの四球を出しながらもあと1人というところまできた。
そしてここで迎えたのはなんの因果か先ほどの打席で完全試合を破ったオルティズ。
球場のボルテージは最高潮の中、オルティズの打球は内野の間を抜けてヒットとなった。
そして終盤の球数増加のためこの時点で126球に達していたダルビッシュはまたしても完封目前で降板し、ノーヒットノーランも初完封も逃してしまうこととなったのだ。

1年前の再現のような試合に、ガッカリしてしまったファンも多いだろうが、やはりそれだけノーヒッターの達成は難しいということがよくわかる。
バーランダーのようないつノーヒッターをやってもおかしくないような投手が順当に達成することもあれば、たローテーションの後ろを守るのも怪しいような投手が完全試合まで達成してしまうこともある。
これを一言で片付けてしまえばやはり運なのだろう。
それでもダルビッシュはまだ27歳。
今回もノーヒッターこそならなかったが今季初の2桁奪三振を記録するなど安定感や支配力は超一流に着実に近づきつつある。
今季はまぎれもなくサイ・ヤング賞の最有力であり、今後もノーヒッター達成のチャンスは何度でも訪れるだろう。
彼が日本一から世界一になる日もそう遠くない。





また今日は田中将大も登板した。
ナ・リーグのブルワーズとの対戦のためMLB入り後初のDHなしの試合となったが、結果は6.1回を2失点に抑えるなど上々の出来でQS率100%と無敗を維持することに成功している。
打撃の方は3打数無安打3三振と散々だったが、相手は今季最も好調なブルワーズでなおかつ投手がエースのガヤルドだったことを考えるとこの勝利には非常に大きな価値がある。
うまくすればダルビッシュとのサイ・ヤング賞争いも今季中にみることができるかもしれない。




4 件のコメント:

  1. スカーバラ2014年5月10日 21:49

     ダルビッシュ投手は惜しかったですね。たまたまテレビで観ていたのですが、「こんどこそ達成だ」と思ったら、オルティーズにヒットを打たれてしまい長蛇を逸することになってしまいました。達成間近まで行くこと自体はすごいことですが、運がなかったですね。
     無安打無得点を直前で複数回逃した投手というとプロ野球では西口文也投手の名前が浮かんできますが、大リーグでもかつてブルージェイズを支えたデーブ・スティーブ投手が88年から89年にかけて3回も後一人からノーヒットノーランを逃しています(最初の2回は二試合連続であり、最後の1回は完全試合寸前だった)。なかなかうまくはいかないものです。なお、スティーブは90年に4回目にしてノーヒットノーランを達成しました。ダルビッシュもまた機会があるでしょう。

     ただ、今回の試合に関しては7回で完全試合はもちろん、無安打無得点も途切れていたという見方もあるそうです。確かにあれはヒットと判定されても文句は言えなかったと思います。もしかしたら記録員も温情をかけてしまったのかもしれません。かつてノーラン・ライアンがエンゼルス時代に5度目のノーヒットノーランを達成しかけた試合で、微妙なエラー判定があって少し問題になったという話を聞いたことがあります(9回にヒットが出て達成はならず)。大記録未達成の試合にも達成とは異なるドラマがあるものです。

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    1. コメントありがとうございます。
      日本では確かに西口が最も運がない投手としてよく名前が挙がりますが、ダルビッシュはそうならずにいつか達成してくれることを願いたいですね。
      今回は以前の弱小アストロズとは違い、レッドソックス打線を手玉にとったわけですからステップはしっかり上ったと考えてもいいのかもしれません。

      今回の疑惑の判定に関しては私も後で映像を見たのですが、正直なところあれはヒットと判定されるべきだったと私も考えています。
      そう思うと、初のノーヒッターに変にケチがついてしまうよりはまたいつか文句なしの形で達成してくれほうがいいような気もしますね。
      とにかくダルビッシュはまだ渡米後完封どころか完投もないわけですから、今季はまず一つ完投を見せてほしいところです。

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  2. スカーバラ2014年5月28日 22:34

     少し前の話題になりますが、 事後の判定変更で7回のオルティーズの打球はヒットと訂正されました。まあこれで「惜しくはない」ということになるでしょうか?
     ただ、今回はダルビッシュ投手が最後の最後にヒットを打たれていたからよかったものの、仮に「ノーヒットノーラン達成」ということになっていたら、どうなっていたでしょう?事後の記録訂正で大記録も取り消しというのは、締まらないなどというものではなく、あまりにも悲しいことになってしまいます。しかし、今回のような記録訂正があるということは今後「事後的な記録取り消し」が発生する可能性もあるということです。一方、反対にヒットがエラーに訂正されることで「事後的にノーヒットノーラン達成」という事態もあるはずで、これは投手にとってはよいことですが、いささかぱっとしないのも事実です。

     事後的な記録の訂正は時に極めて興醒めする結果をもたらすこともあります。その最たるものが「グレイテストゲーム」に起こった悲劇です。「グレイテストゲーム」とは、1959年5月26日のブレーブス対パイレーツの試合です。この試合、パイレーツの先発投手ハービー・ハディックスは大リーグ史上に残る偉業を達成しました。何と1回から12回まで一人のランナーも出さない完全試合、大リーグのどんな投手も達成していない大記録でした。ところが、味方が1点も取ってくれなかったため、結局、13回に1点取られて負けてしまったのです(1安打)。敗れたとはいえあまりにもすごい記録だったので、従来、特例として「完全試合」に認定されていました。ところが、1991年に大リーグは規定を見直して、延長で記録が途切れたらいかなる場合でも完全試合とは認めないことにしてしまい、その結果、ハディックスの完全試合は事後的に完全試合から外されてしまったのです。なるほど規則を杓子定規に考えれば大リーグの決定は「正しい」とも言えますが、しかしあまりにも形式論ではないかと思います(この決定に対する批判は強い。私も特例認定を復活させるべきだと思う)。
     これは極端な例ですが、思うに事後的な記録(積極的なもの)の取り消しには慎重であるべきでしょう(一方、2010年のタイガースのガララーガ投手のように「誤審で完全試合を逃した」場合などは訂正して認定してもよいのではないか)。プロスポーツはやっぱり「夢」を売っているのですから、それを壊すようなことはやむを得ない場合に限るべきでしょう。

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    1. コメントありがとうございます。
      オーティズの打球は通常ならヒットと判断されるケースが多いものでしたから、今回のMLBの判断自体は正しいでしょう。
      とは言え、やはり事後の訂正というものは少々興ざめしてしまうものであることは間違いなく、ことノーヒッターなどの大記録が関わってくると判断には慎重にならざるを得ません。
      今回のケースでは、ダルビッシュがノーヒッターを達成していれば流石に訂正されることはなかったのではないかと思いますが、そうなったらなったで曰く付きの記録となってしまうところでした。
      近年ではおっしゃるようにガララーガの世紀の大誤審がありましたが、あのように審判が自分のミスを認めたケースでは私も完全試合認定してもいいのではないかと思います。
      審判の威厳にも関わるのかもしれませんが、あまりにも杓子定規な判断にファンはがっかりさせられますからね。
      まあこの出来事によって、フィリップ・ハンバーのようにただ完全試合を達成しただけの投手としてではなく、世紀の大誤審の当事者としてガララーガの存在がより印象づけられたことは間違いないでしょうけどね。
      ビデオ判定の導入によって今後はこういったことが少なくなることを願います。

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