2014年5月10日土曜日

データからみる田中の投球内容

ここまで好投を続ける田中将大。
特にボールやマウンドの違いで制球面で苦しむ投手が多い中で田中に関してはその兆候が全くなく、しっかりと長いイニングを投げることができている。
まずは現在のMLBでの以下の成績を日本にいた時のものと比較してみよう。

7試合 5勝0敗 防御率2.57 49.0回 58奪三振 7四球 7被本塁打 WHIP1.00
K/9 10.65   BB/9 1.29   HR/9 1.29   K/BB 8.29

今回注目するのは投手にコントロールが可能な奪三振率、四球率、被本塁打率の3つだが、日本でのラスト3シーズンのそれらの成績は以下の通りだ。

2011年 K/9 9.6   BB/9 1.1   HR/9 0.3   K/BB 8.93
2012年 K/9 8.8   BB/9 1.0   HR/9 0.2   K/BB 8.89
2013年 K/9 7.8   BB/9 1.4   HR/9 0.3   K/BB 5.72

こうやって比較してみると、制球力に関しては日本にいた時と同じ水準を維持しつつ奪三振力が上がっていることがよくわかる。
これは三振を嫌う日本の選手と違い、MLBには三振を恐れず長打を狙う強打者が多いことが原因の一つであることは間違いないだろう。
ダルビッシュなどもこのことがMLBでの高奪三振率の原因になっている。
これから研究されれば奪三振率が落ちることもあるかもしれないが、奪三振率9ポイント超えを維持することは可能だろう。
しかし一つ大きく悪化しているのが被本塁打率だが、これは日本人のほとんどの投手に見られる傾向でありMLB移籍をする投手には避けられないものだ。
前述したように三振を恐れない反面当たればどこまでも強打者が揃うため、沈む速球を多投するなどしない限りはなかなかこの部分の改善は難しいだろう。


続いて見るのは投球割合とそれぞれの球種の平均球速だ。
*データはFanGraphsより

4シーム(91.7mph) 25.3%
シンカー(90.4mph) 23.1%
スプリッター(86.2mph) 22.7%
スライダー(83.7mph) 19.4%
カーブ(73.9mph) 6.7%
チェンジアップ(86.9mph) 1.6%
カッター(90.1mph) 0.8%
ツーシーム(91.7mph) 0.3%

細かい部分を抜きにすれば4シームとムービングファスト、スプリッター、スライダーをそれぞれ大きく変わらない割合で投げることで約9割を構成している。
緩急をつけるスローカーブなどはたまにしか投げず、基本的にはボールの変化で抑える投球だ。
これらの球種の中で特徴的なのはなんといっても代名詞のスプリッターで、当然ながらMLBでは使い手の少ないこの球種を20%以上の割合で多投しているのは今季は田中と黒田を含めて4人しかいない。
また、ただ多投しているだけではなく田中の場合は絶対的な武器になっており、球種ごとの効果を表すデータでは田中のスプリッターはMLBでずば抜けた1位の数字を記録している。
つまり今の彼はMLBで最も優れたスプリッターの使い手だと言っていいだろう。
加えて彼の球種の中で効果的になっているのがキャリアの序盤でのウィニングショットだったスライダーで、こちらもMLBトップクラスの威力を見せている。
ちなみにこの部門でMLB最高値を記録しているのがダルビッシュだ。

しかしこの2球種が大きな武器となっている反面速球の方はあまり芳しくない。
4シームの平均球速はMLBの平均程度であり、渡米前からあまり評価が高くなかった通りに武器となるレベルには達していない。
最速では95.2mph(153km)にとどまっているが、夏場になればもっと球速も上がってくるだろう。
さらに酷いのがシンカーの方で、こちらは被打率が.359とかなり酷い打たれっぷりになっており、長打も浴びやすい。
本塁打の出やすいヤンキースを本拠地にしていることもあって、被本塁打率を改善するための最重要球種がシンカー系の沈む速球になるはずだ。
これでゴロを量産できるようになり、カウントも稼げるようにならなければこれからも長打の脅威に悩まされることになる。


内容的には非常に高い水準にあるが、長打への対策という点でシンカー系速球の改善に加え、スプリッターとスライダーの水準を落とさないことが重要になる。
しかし今の状態を維持するだけでも十分MLBトップクラスの投手にはなれるだろう。
 


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