2014年1月15日水曜日

田中は一体どこへ行く?

連日アメリカ、日本のメディアを賑わせている田中将大だが、その行き先がどこになるのかを多くの識者たちが議論している。
例年までのポスティングならば最高額を入札した1球団だけとしか交渉できなかったが、今回新ポスティングシステムで2000万ドルの上限まで入札した球団すべてと交渉できるようになったため、複数球団が上限入札するであろう田中が交渉決裂で日本に戻ってくる岩隈や中島のようなパターンに陥る可能性はほぼないだろう。
つまり田中の2014年所属球団はMLB球団のどこかということになる。
ヤンキース、ドジャース、マリナーズなどなどいくつもの球団の名前が挙がってはいるが、実際獲得の可能性が高い球団はどこなのかを考えてみたい。

そこで気になるのは球団の必死度だ。
ローテーションをより強固にするために田中を獲得したいのか、それともチーム再建の切り札として田中を獲得したいのかで必死度は大きく変わってくる。
もちろん後者の方がより必死に田中を獲得しようとするし、実際の契約条件もかなり高額なものを提示してくるはずだ。
それでは必死なチームはどこなのか?
チーム状況を考えてもローテーションの柱として是が非でも田中を獲得したいのはヤンキース、オリオールズ、エンジェルス、マリナーズ、ダイヤモンドバックスあたりだ。

ヤンキースは言うまでもなくチームの高齢化に悩まされている。
先発ローテーションを見ても、いつ衰えがきてもおかしくない黒田、大不振に陥ったサバシア、ブレイク気味のノバ、怪我から復帰するピネダ、便利屋的扱いのフェルプスと到底優勝を狙うチームとは思えないような陣容だ。
間違いなく今季も安定した成績を残してれるだろうという存在がサバシアが不振に陥ったことでいなくなってしまったのだ。
今オフ派手に野手を補強したはいいものの先発投手の補強は必須で、その第一候補がやはり田中だ。
他にも実績ある投手がFAにいる中で田中がファーストチョイスである理由はやはり若さ。
これは他のチームにとっても同じだが、長期契約で囲い込む傾向が強くなってきた近年において若くエース級のポテンシャルを持った投手を補強できるチャンスがやってくるのは稀だ。
また田中の場合はドラフト指名権を失うこともないのが大きい。
FA市場に出ている有力投手の中で田中同様ドラフト指名権が絡んでこないのはマット・ガーザくらいだが、彼は30歳で2番手クラスの投手だということを考えるとうまくすればサイ・ヤング級の活躍も見込める田中がファーストチョイスになるのは当然の話だろう。
チーム全体の高齢化が進んでおり今オフに大型補強した野手もすべて30歳以上だったことを考えればとにかく若返りを図りたいヤンキースとしては田中はベストオプションだ。
一方でヤンキースは過去に井川獲得という大失敗も犯しており、黒田の活躍で多少なりとも日本人投手に対するイメージは持ち直しただろうが、既にMLBでの実績があった選手とこれからMLBでプレーする選手ではやはり話が違ってくる。
どれだけ田中のポテンシャルが高かろうが、環境が変わることで適応できずに終わってしまう可能性も低くはない。
それでもやはり田中獲得を最重要項目としているヤンキースは非常にまずいチーム状況にあることがうかがえる。

オリオールズは今季地区優勝を狙えるチームだ。
ただでさえ強力だった打線でデイビスが50本級打者へと成長し総合的な貢献度では既にリーグトップクラスのマチャドの台頭、今季は昨季穴だったセカンドをプロスペクトのスコープが埋めてくれるだろう。
とにかく攻守において非常に強力なのだが、そんなオリオールズがネックとしているのが投手陣だ。
エース級投手になると思われたマトゥスやブリットンが伸び悩み次代のエースとなるはずのバンディはTJ手術を受けた。
昨季デビューした剛腕の若手ゴースマンも十分な結果を残せたとは言い難い。
現状ローテーションとして機能しそうなのはティルマン、ゴンザレス、チェン、ノリスだが、激戦区であるア・リーグ東地区においてこれでは優勝を狙うローテーションとしては明らかに不十分だ。
オリオールズはダルビッシュのポスティング時から田中には興味を示しており、チェン、和田を獲得したようにNPB出身選手獲得にも積極的な方だ。
和田獲得は大失敗だったがチェンは戦力として機能しているため田中に対する悪影響はそれほどないだろう。
ただしこちらは今が旬のチームだけにドラフト指名権を失うことを恐れずに他のFA投手を狙うという可能性も高い。

エンジェルスはこの2年の大型契約で大きな失敗をしている。
プホルス、ハミルトンの両名を獲得したことは現時点では大失敗と言わざるをえない。
これでチーム成績が良ければまだマシなのだがプレーオフ進出からも遠ざかっている状況だ。
しかしプレーオフ進出がならなかった要因はどちらかと言うと打線より投手の方にある。
リリーフの脆弱さに加えて主力先発投手が怪我などもあり思うような活躍をしてくれなかったのが主な原因だ。
オフにはそれを改善すべくトレードを駆使しサンティアゴ、スキャッグスという2人の若手左腕を獲得することに成功した。
昨季からいたウィーバー、ウィルソン、リチャーズを加えてこれで一応5人のローテーションが組める。
しかしスキャッグスがまだまだ未知数なのに加えてある程度信頼がおけるのはウィーバー、ウィルソンだけという状況は好ましくない。
同地区ではアスレチックス、レンジャーズが台頭している上にマリナーズが強豪への道を歩みつつあり、エンジェルスは何か賭けに出ないとこれらのチームを打ち破れないというところまで追い込まれている。
またプホルス、ハミルトン、ウィルソンと大型契約をいくつも抱えている以上容易に再建期に移ることもできず、どうしてもエース級投手が欲しいという状態だ。

マリナーズは今オフヤンキースとともに主役になった。
カノー、ハート、モリソンと野手を大型補強したことで今季優勝への意思を示したのだ。
しかしその一方で投手に関しては大きなテコ入れがされていない。
投手有利の本拠地の性質、メジャーではまだ未知数な若手頼りのローテーションを考えてもヘルナンデス、岩隈に続いて安定した結果を残せる投手がもう一枚は必要だ。
個人的にはMLBでの実績があるFA投手を獲得した方がいいとは思うが、イチロー、佐々木、岩隈など基本的に日本人選手では大きな失敗をしていないだけに田中への思いは強いだろう。

ダイヤモンドバックスにはエースが存在しない。
昨季エース級の活躍を見せた若手左腕のコルビンはいるが、終盤に一気に失速したところを見るとまだまだエースと呼べるような投手ではないことがわかる。
他のローテーション投手はケーヒル、マイリー、デルガド、マッカーシーだがどの投手もエース級になる可能性は高くない。
主力が20代中盤から30代前半のダイヤモンドバックスはこれから3~5年間が地区優勝、ひいては
ワールドシリーズ制覇の最大のチャンスとなる。
有望な若手プロスペクトなどもいるがやはり手っ取り早くエースが欲しいところで、そうなるとやはりファーストチョイスは田中になる。
特に今後ライバルになるであろうドジャースにはカーショウ、グレインキーといった左右のエースがいるだけに彼らに匹敵するポテンシャルを秘めた投手が必要なのだ。


各球団それぞれが本気で田中を欲しがっているのだが、私の予想としては最も好条件を出して田中を獲得することになるのはヤンキースだと思う。
新ポスティングは資金力に乏しい球団にもチャンスはあるが、結局のところ交渉段階ではマネーゲームになること間違いなしだ。
例えば選手が特定の地域にこだわるなどそういうことがない限りは最も高額条件を出した球団に行くのが自然であり、それが今回の場合はヤンキースになる可能性が高い。
田中に対する必死度ではやはりヤンキースが頭一つ抜けており、それだけでなく資金力も豊富だ。
A・ロッドが今季全試合出場停止処分となったことで2500万ドル近い資金が浮いたことは田中にとって朗報だろう。
エンジェルスもマネーゲームではヤンキースに負けないくらい出せそうだが、ヤンキース程高齢化に悩まされているわけではないため他の30歳前後の先発投手でもなんとかなる。
他にヤンキースに匹敵する資金があるのはドジャースだが、ここは既にローテーションが充実しているためマネーゲームに参戦してまで田中を獲得する必要がない。
となればやはりヤンキースが最有力なのだ。


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