2014年1月23日木曜日

田中に求められる成績は?

田中が7年1億5500万ドルというメジャー経験のない選手に対しては史上最高額の契約でヤンキースと合意したが、おそらくこの金額にどれほどのパフォーマンスが求められるのかということはMLBにあまり詳しくない日本のファンには見当がつかないだろう。
田中の契約はポスティング・フィーも含めれば実質7年1億7500万ドルということになる。
つまり年平均で2500万ドルで、これはマリナーズのエースであるフェリックス・ヘルナンデスが結んだ契約とほぼ同じレベルだ。
他にもこのレベルの契約をした投手はサバシア、バーランダー、グレインキー、そして先日のカーショウなどMLB全体を見渡せば数人いるのだが、彼らはいずれもサイ・ヤング賞経験者でありMLBで確固たる実績があった。
田中は彼らと同列の契約を得たということは、当然サイ・ヤング賞クラスの成績を期待されて然るべきなのである。
では具体的にどういう数字を残せばいいのかというと、FanGraphsがWARからその選手のパフォーマンスに対する価値を割り出しているので過去3年分を参考にさせてもらう。

2013年2500万ドル以上の価値があったのは
クレイトン・カーショウ 3250万ドル
マックス・シャーザー 3200万ドル
アニバル・サンチェス 3120万ドル
アダム・ウェインライト 3100万ドル
マット・ハービー  3040万ドル
フェリックス・ヘルナンデス 3010万ドル
ジャスティン・バーランダー 2610万ドル
クリフ・リー 2560万ドル
クリス・セール 2560万ドル
ダルビッシュ有 2500万ドル

2012年は
ジャスティン・バーランダー 3160万ドル
フェリックス・ヘルナンデス 2640万ドル

2011年は
ロイ・ハラデイ 3630万ドル
ジャスティン・バーランダー 3100万ドル
クレイトン・カーショウ 2960万ドル
CC・サバシア 2950万ドル
クリフ・リー 2920万ドル 
ダン・ヘイレン 2780万ドル
ジェレッド・ウィーバー 2580万ドル

それぞれがその年にどれだけの成績を挙げたのかは調べていただくとして、2013年ダルビッシュ、2012年ヘルナンデス、2011年ウィーバーが残した成績からだいたいの数字を出してみると2500万ドル超えに必要な最低ラインは

32試合 防御率2.80 220回 200奪三振 60四球 WHIP1.10

といったところだろうか(打線に影響されやすい勝敗は省略した)。
FanGraphsはWARをFIPなどから算出しており、極力運の要素を除外しようとしているのであくまで参考程度に思ってもらいたいが、だいたいのところとしてはこの程度の数字は求められるということだ。
そしてこれだけの数字を出せば当然サイ・ヤング賞候補の一人にもなる。
しかも7年契約ということは単純な話7年の平均でこの数値を出すことが求められるのだ。
しかし実際にはそうはうまくいかず、1年目はダルビッシュ同様に苦しむことになるかもしれない。
そのためそこを考慮して1年目の田中の最低ラインを個人的に考えてみたいと思う。

30試合 15勝8敗 防御率3.70 190回 180奪三振 70四球 WHIP1.25

これが私が考える1年目のヤンキース田中の及第点だ。
ニューヨークのファンもこれだけやれば2年目に期待できるということで余裕を持って応援してくれるだろうが、これを切るような活躍(例えば防御率4点台や怪我での長期離脱など)であれば容赦なく叩かれるはずだ。
田中のメンタルがどの程度のものなのかわかわらないが、数多くの投手がニューヨークのメディアに押しつぶされてきている。
チームNO.1のスターとして長年プレーしてきたイチロー、ニューヨークのプレッシャーに打ち勝ち好投している黒田という二人の理想的なお手本から田中がヒントを得て縦横無尽に活躍することを願おう。



  

2 件のコメント:

  1. スカーバラ2014年1月30日 22:18

     田中がどれだけの成績を残せるかに関しては、日本国内では「大活躍間違いなし」という類のヨイショ報道が目立ち、真にまじめに分析して予想を立てる報道はあまり見られないのが現状です。特に古株のプロ野球OBにその傾向が強く、かつて来日した大リーガーにさんざんな目に合された意趣返しをしているのではないかと疑いたくなります(「メジャーでは『肘を痛める』などとビビッてフォークボールを投げる投手がいなくなっているから、田中の球を打てるやつはいない」という説もあった。本当にそうかな?)。

     私自身の予想では年齢からみても今が最盛期であることからして、15勝くらいはあげるのではないでしょうか(打線の援護は期待できるだろう)。防御率も2点台の後半から3点台半ばくらいになるのではないかと思います。
     もっとも不安材料もないとは言えません。昨年がよすぎたためその反動が来ることも予想されますが、少なからぬ大リーグ関係者が懸念していたのは「高校以来あまりにも投げさせられすぎている」ということでした(昨年の日本シリーズでも第6戦、7戦で「常識外」の投球数を投げている)。一般に日本の投手は従来から「選手寿命が短い」傾向があり、その理由の一つが高校野球にあると言われています。田中にも予想外に早くガタがくる可能性もないとは言えません。
     ここは球数やイニング数を制限する起用法が重要になってくるでしょう。問題は日本に「球数等を制限するから日本人投手は力を発揮できなくなる」という意見が根強いということ(実際、球数制限を否定的に見るOBは後を絶たない)。なるほど、確かに投手の調子は日によって違うので、150球でも大丈夫という日もあるし、80球くらいでばててしまう日もあるでしょう。ゆえに形式的に「100球まで」としてしまうのは妥当でないこともあります。しかし、長い目で見れば登板過多、投球数過多が投手の寿命を縮めるのは明らか。上記した見解はアナクロニズムでしかありません。論者は田中は毎回160球投げても大丈夫と考えているのでしょうか?

     最後に。私もニューヨークのメディアやファンの極端さが田中に悪い影響を与えるのではないかと心配しています。ヤンキースのファンや報道はもともと「極端結果主義」みたいな傾向が強く、あまりほめられたものではありません。「勝つのが当たり前」みたいなシーズンが多かったせいでそういう傾向が育まれたのかもしれませんが、もう少し寛容に気長になるべきだと思います。選手を押し潰しても球界の損失になるだけです(もっともヤンキース以外で活躍してくれるのならいいですが)。

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    1. コメントありがとうございます。
      田中に関しては「メジャーで活躍する実力は十分にある。問題は環境の変化などに適応する能力があるかどうか。」といった考えが一般的になりつつありますね。
      少なくとも識者たちはそう見ているはずです。
      日本のトップクラスの投手がメジャーでもエース級のパフォーマンスを発揮できるということは先人たちが証明してくれていますから、問題は適応力であることは疑いありません。
      黒田や岩隈などはうまく向こうの環境に適応したからこそあれだけの成績を残すことができましたし、逆に松坂はうまく適応できずに結局本来の実力は出せずじまいでした。
      田中はボール、マウンドといったプレー面での違いに加えてアメリカでの生活やニューヨークのメディアにも適応しなくてはなりませんから、これを克服できるかどうかにはすべてはかかっています。
      またおっしゃるとおり田中は高校以来投げすぎの傾向にあります。
      これからの7年間は怪我のリスクが常につきまとうでしょうし、トミー・ジョン手術などする羽目にでもなろうものならサラリーに見合うだけの労働ができない田中、怪我のリスクに負けたヤンキース、そして疲労蓄積の最大の原因とみられる日本球界にも批判の矛先が向くでしょう。
      このあまりにも高額な契約がもたらす影響はあまりにも大きく、その影響は日米両方の球界に関わってくるでしょうね。

      ちなみに田中に関するprojectionsを色々とみているとその予想は
      10勝前半 防御率3点台前半 190回前後
      といったものが多く見受けられます。
      どの予想でも四球が少なくされているのは流石といったところですが、やはり識者たちはメジャー未経験のルーキーに過度な期待はしていないということなんでしょうね。
      かく言う私も同じような予想をしており、いずれ戦力が固まった際には成績予想を書きたいと思っていますが、1年目からエース級とまでは思っていません。
      ニューヨークのメディアとの折り合いがつけられなければさらに悪い方に期待を裏切ることはあるかもしれませんけどね。

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