2013年7月21日日曜日

パイレーツの強さの秘密は?

今季はピッツバーグ・パイレーツが好調だ。
パイレーツはここ数年何度も前半戦健闘しつつも、最終的には勝率5割の壁を超えることができなかった。
昨季はオールスター前まで48勝37敗で首位に立っていながら後半失速し最終的には79勝83敗で4位に甘んじてしまったのだ。
これによってアメリカンスポーツ史上初となる20シーズン連続負け越しという不名誉な記録まで樹立してしまった。
しかし少なくともここ数年のパイレーツは以前のような弱小ではなくなったことは確かだ。
終盤失速してしまうのはやはり地力がまだ他チームより下回っているからだが、言い換えれば勝ち方を知らないというも言える。
それでも安牌ではなくなり、毎年成長しつつあるパイレーツは他チームにとっても非常に脅威になっている。
今季は現時点で56勝39敗でカージナルスに次ぐ地区2位だが、勝率.589はMLB全体3位という好成績だ。
地区2位に甘んじているのはカージナルスが強すぎるせいだとも言えるだろう。
今季こそ不名誉な記録を終わらせることができそうだが、パイレーツはどうしてこれほど強くなったのだろうか。

まずはチームスタッツをみてみよう。

打率.243(リーグ12位)
94本塁打(リーグ5位)
得点364(リーグ13位)
出塁率.310(リーグ11位)
OPS.700(リーグ11位)
68盗塁(リーグ4位)

防御率3.09(リーグ1位)
スターター防御率3.33(リーグ1位)
リリーバー防御率2.73(リーグ2位)
K/BB2.38(リーグ11位)
72被本塁打(リーグ2位)
FIP3.67(リーグ5位)
xFIP3.76(リーグ4位)
WHIP1.19(リーグ2位)
34セーブ(リーグ1位)

数値を見れば一目瞭然。
攻撃面で優秀なのは長打力と機動力のみで、このチームは投手力でここまできている。
その軸になっているのがニューヨークのプレッシャーから解放されたAJ・バーネット、復活したフランシスコ・リリアーノ、大ブレイクしているジェフ・ロック、実績抜群で安定しているワンディ・ロドリゲス、そしてMLB最高の投手になることが期待されている全米1位選手ゲリット・コールという弱点の見当たらない先発ローテーションと、今やリーグ有数のクローザーとなったジェイソン・グリリ、ブレイクし絶対的セットアッパーとなったマーク・メランソンである。
つまり最重要な先発、クローザー、セットアッパーのそれぞれが安定していることがこの強さの秘密である。
もちろん他のリリーフスタッフも好投している選手ばかりで、投手に関してはリーグ有数のものになっている。

だが、実は昨季も平均以下の得点力とリーグ有数の投手陣という似たような状況から終わってみれば勝率5割を切る結果になったのだ。
基本的に投打のどちらかに依存していて好成績を残していたチームというのは終盤になって疲れが出ると一気に順位を落としやすい。
今季はより投手依存なだけにここからまた昨季のように順位を落とすのではないかという危惧もある。
だが、今季は昨季と大きく違う点が一つある。
それは先発ローテーションの質だ。
昨季も前半戦はリリーフが防御率リーグ1位の好投を見せていたのだが、終盤にスタミナ切れをおこしリリーフ防御率は終わってみればリーグ7位まで後退した。
前半戦で防御率リーグ7位だった先発投手陣も崩れて結局最後には平均以下の投手陣になってしまったのだ。
だが今季はリリーフだけでなく先発もリーグ最高クラスだ。
先発、リリーフのどちらかが終盤調子を落としたとしても、なんとか耐えきることができるはずのレベルには達している。
しかも素晴らしいことに先発ローテーションではロドリゲス以外はみんなセイバーメトリクス的にも優秀な数値を残しているのだ。

そしてもう一つ昨季と違う好材料は守備の成長だ。
パイレーツの主力野手は若い選手が多く、常に成長している。
昨季は平均以下だったパイレーツ守備陣は大きく成長し、今季はDRSリーグ2位、UZRリーグ3位という数値が出ている。
特にマッカッチェンの守備がついに向上し、元々守備はトップクラスのマーテがいることで外野の守備力が非常に高いことが大きい。
センターラインの守備がいいというどこのチームでも羨む状況なのだ。
投手力が高く守備がいいという優秀な”守り”のチームになったわけだが、これは本拠地が投手有利であることを考えるとかなり効率的だ。
実際アウェイになるとチームOPSがリーグ4位になるなど打線もそれほど悪くない。

つまり今季のパイレーツの好調の最大の秘密は”本拠地にあってチームカラーを作りあげることができているから”ということになる。
そう考えればこの強さはフロックでもなんでもない。
パイレーツは強いチームになる条件をしっかり揃えてきたわけだ。
大きな故障に見舞われなければおそらく今季こそは不名誉な記録とおさらばできる。
それだけでなくポストシーズンに進出することになるだろうし、そうなれば投手力の高いパイレーツは短期決戦では有利に試合を進めることができる。
一つ大きな不安材料を挙げるなら、チームに”勝ち方を知っている”選手が少ないという点だが、それは今後身につけていくしかない。
ピッツバーグのファンが歓喜に湧く日もそう遠くはないはずだ。





0 件のコメント:

コメントを投稿